【自作のレモンケーキを手にする宗重さん=名張市桔梗が丘5で】

食べてもらえるうれしさ実感

 「もう一度食べたい」と思ってもらえる菓子を作りたいと、自宅を改装して菓子工房を開いた、三重県名張市桔梗が丘5番町のパート従業員、宗重香さん。家族のために一つひとつ丁寧に作っていた優しい味が評判を呼び、今では「たくさんの人に食べてもらえるうれしさを知ることができた」と話す。

 娘たちが生まれ、「自分で作ろう」とパン教室に通い始めたのが約20年前。また15年前には独学で菓子作りも始めた。喜ぶ家族の顔を見るので十分、と思っていたが、友人や職場の人にも食べてもらったところ評判に。中には「お店を開いたら」と勧める人もいたが、当時は趣味として満足していた。

 転機は昨春に訪れた。長女が就職で家を離れることになり、今まで家族のために一生懸命頑張ってきた宗重さんの心に寂しさが募った。「これを機に、これからの時間を自分の好きなことに使ってみたい、お店に挑戦してみよう」と気持ちを奮い立たせたという。

 秋には自宅のリフォームを始め、保健所の許可も取った。工房名は名前の「香」に「菓子を織りなす」という意味を込め、娘たちが「菓織」と付けてくれた。

「家族の協力に感謝」

 提供する菓子は「自分が一番好きなものを」と、レモンケーキにした。さまざまな店のケーキを食べ、味を研究。甘すぎるのは苦手なので、ケーキの上部をレモンチョコでコーティングし、アクセントにピスタチオをトッピング。「上はパリッと、下の生地はふんわりとした食感が楽しめる」ことを意識したケーキを完成させた。

 今年1月の開店と同時に、SNSのフォロワーからも注文が入り、またたく間に広がっていった。2月には京都で開催されたイベントに初出店。レモンケーキに加え、プリンや焼き菓子も販売したところ、外国人観光客にも人気だったそうだ。

 「家族の協力があってこそ」と感謝する宗重さん。「一つひとつ丁寧に作りたいので、仕事もしている今はレモンケーキだけでいっぱいいっぱいだが、今後もっとさまざまなお菓子を販売したい」と話した。

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