【視聴を呼び掛ける辻さん(右)と成洋さん=名張市下比奈知で】

被災地への寄付も

 阪神・淡路大震災で被災者の心のケアに奔走した精神科医、故・安克昌さんを描いた映画「心の傷を癒すということ(劇場版)」が、能登半島地震の被災地支援を目的に3月31日までオンラインで無料配信されている。中学、高校時代に安さんと同級生だった三重県名張市の喫茶店主、辻孝信さん(63)は「安君を通じて、誰一人残さない社会のあるべき姿を考えてほしい」と視聴を呼び掛けている。

故・安克昌さん

 安さんは大阪市出身で、日本でのPTSD(心的外傷後ストレス障害)研究の先駆者として知られる。神戸大学医学部の精神神経科で助手を務めていた1995年、阪神・淡路大震災が発生。自ら被災しながらも、避難所などで多くの被災者の声に耳を傾け、カウンセリングや診療などの救護活動を行った。2000年に肝細胞がんが発覚し、39歳の若さで亡くなった。

 映画は、安さんを題材に20年にNHKが放送したドラマを再編集し、21年に公開。俳優の柄本佑さんが主演を務めた。今回の無料配信は、同映画の製作委員会代表で安さんの弟の成洋さん(59)=大阪市=が企画。投稿サイト「note」の「映画『心の傷を癒すということ 劇場版』製作委員会」内のページ(https://note.com/kokoroiyasu_mov/n/n000ce318bc24)にあるリンクから視聴でき、併せて被災地への寄付を呼び掛けている。

 名張市下比奈知の辻さんの店を2月2日に訪れた成洋さんは、当時の安さんについて「ハードワークで体はきつかったはずだが、患者さんと対話することにやりがいがあって、本当に好きでやっていたのだと思う」と振り返る。配信については「映画を見た方が、被災地のために自分ができることは何かを考えるきっかけになれば」と話した。

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