【耐震管への更新工事の様子(名張市提供)】

 トイレを流せない、風呂に入れない、洗濯もできない――。能登半島地震の被災地では、発生から1か月以上が経過しても大規模な断水が続き、人々の生活に大きな影響を与えている。南海トラフ巨大地震の県の理論上最大想定で、震度6強の揺れが襲うとされる三重県伊賀地域。断水を防ぐためには水道施設の耐震化が重要だが、状況はどうか。

 浄水場と配水池を結ぶなど主要な水道管「基幹管路」の地震対策の代表的な指標として、「耐震管率」がある。

 耐震管率は、管と管の継ぎ手に抜け出し防止機能があるなど、曲がりや引っ張りに強い「耐震管」の割合を示す。2021年度末で伊賀市が9・1%、名張市が14・3%。全国平均は27・4%、県平均は19・8%で、両市とも全国、県を下回っている。

 耐震管でなくとも地盤などを考慮すれば震度6強の揺れに耐え得ると評価できる管の割合「耐震適合率」は、21年度末で名張市が全国と県平均を、伊賀市が県平均を上回るが、いずれにしても地震の強い揺れに耐えられない管の割合は少なくない。

 両市とも主に古くなった管の更新時に耐震管に交換しているが、年間の更新率は伊賀市が0・3%程度、名張市は1%程度となっている。耐震化は重要な課題だが、限られた財源の中でペースが上がらないのが現状だ。

建物の耐震化も必要

 能登半島地震では、主要な浄水場などの建物が被災したことも断水の長期化の要因となっているとされている。川などから取り込んだ水を奇麗にして飲み水にする浄水場は、伊賀市に17か所(ゆめが丘、小田など)、名張市に4か所(富貴ケ丘、大屋戸など)ある。浄水場で作られた水を一時的にためる配水池は、伊賀市に65か所、名張市に37か所あり、それぞれ最新の耐震基準に合わせた整備を進めている。

被災時の給水

 能登半島地震では、2月9日時点で石川県で約3万4800戸が断水したままとなっている。水道管などの耐震化が遅れていたとの指摘もある。伊賀、名張両市においても非耐震管の割合がまだ高く、巨大地震で大規模な断水が発生する可能性は高い。

 断水時に給水活動を行う給水車の所有台数は、伊賀、名張両市とも2台(2トン、4トン)のみ。大規模断水時には他の自治体の支援が必要となるが、広範囲の被災が予想される南海トラフ地震の場合、どの程度の支援を受けられるかは見通せない。

水の備蓄を

 1人の人間が1日に必要とする水の量は3リットルと言われており、最低3日間、出来れば1週間分が望ましいとされている。生活用水として必要な水も考えれば、もっと必要だ。他に風呂の残り湯を捨てずにためておくと、いざという時に役立つ。

ローリングストック

 普段飲むペットボトルの飲料水を少し多めに買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していく方法で、常に一定量を備蓄しておくことができる。この方法はローリングストックと呼ばれており、水以外に食品の備蓄方法としても有効とされている。

水運ぶ容器を

 災害時、給水車から水を受け取るには容器が必要となる。市でも給水袋を用意しているが、数に限りがあるため、各家庭でもふたの閉まるポリタンクやペットボトルなどを用意しておきたい。大量の水は重いため、キャリーカートなどがあれば運ぶのが楽になる。

 ポリ袋「アイラップ」などを製造する岩谷マテリアル(本社・東京都)は、開口部が広いポリタンクに防災用品を入れて保管する方法を紹介し、注目を集めた。

ポリタンクに防災用品を入れて保管する方法(岩谷マテリアル提供)
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