【サングラスをかけ犯人役を演じる田中さん(左)と携帯電話の画面を模したボードを手に被害者役を演じる綾子さん=名張市赤目町相楽で】

だましの手口再現

 11月22日は「いい夫婦の日」。三重県警名張署赤目駐在所(名張市赤目町檀)に勤務する警部補の田中祐人さん(38)と妻の綾子さん(38)は、地区の集会などで特殊詐欺の巧妙なだましの手口を再現する寸劇を夫婦で披露し、被害防止を呼び掛ける活動に取り組んでいる。

 9月に相楽集会所(赤目町相楽)で開かれた敬老会では、ショートメッセージサービス(SMS)が発端の架空料金請求詐欺に遭う被害者役を綾子さんが演じ、サングラスをかけた犯人役の田中さんが電話で言葉巧みに誘導。電子マネーカードをコンビニで買わせ利用権をだまし取るという、過去に県内で実際にあった手口を実演し、「お金の話が出たら詐欺を疑って」「一人で判断しないで周りに相談を」と注意を呼び掛けた。

 夫婦ならではの息の合った掛け合いに笑いも沸き起こり、集まった高齢者らは熱心にうなずいたり、大きな拍手を送ったりしていた。

取り組みについて語る田中さん(左)と綾子さん=名張市赤目町檀で

 松阪市出身の田中さんは2009年に三重県警に採用され、初任地の鈴鹿署で交番勤務をしていた時、静岡県出身で大学時代から交際していた綾子さんと結婚。いなべ署、熊野署、110番センターを経て、今年3月に名張に着任した。駐在所勤務は3回目で、綾子さんと小学生の長女、長男、次女の5人で暮らしている。

 田中さん夫妻が寸劇を始めたのは、いなべ署管内の駐在所時代。別の駐在所に勤務する先輩が、夫婦で防犯の寸劇に取り組んでいたのがきっかけだった。

 話をするだけの講話より住民の興味を引き付ける寸劇の効果の大きさを感じ、自らも始めようと考えた田中さんに、綾子さんも賛同。より伝わりやすくするためにはどうすべきかなど夫婦でアイデアを出し合い、練習を重ね、披露する機会が増えていった。

 寸劇以外にも防犯を呼び掛けるカレンダーや折り紙の配布、健康と防犯を目指す歌や体操の考案など、住民を巻き込んださまざまな活動に発展した。

二人三脚で

 赤目駐在所管轄は約1600世帯で、独居高齢者も多い。さまざまな業務に田中さんが1人で当たるため、電話対応などを綾子さんがサポートしている。

 綾子さんは「夫と一緒にあれこれ考えるのは楽しい。警察の話は堅苦しいイメージを持たれがちなので、夫婦で取り組むことで、駐在所が地域の中でより身近な存在になっていけば」とほほ笑む。田中さんは「私服の時も『駐在の田中さん夫婦』と呼んで頂けるくらい地域に溶け込めたら。防犯や交通安全の意識向上につながるよう、二人三脚で頑張っていきたい」と語った。2人は、寸劇にとどまらない新たな活動の構想を膨らませている。

- Advertisement -