【上野図書館前の芭蕉句碑と澤野さん=伊賀市上野丸之内で】

草いろいろ おのおの花の 手柄かな

 三重県伊賀市上野丸之内の上野図書館の入り口脇に、同市出身の俳人・松尾芭蕉の句碑がある。開いた本の形をしており、今からちょうど40年前の11月11日に当時のロナルド・レーガン米大統領が国会で演説したのを機に建立された。

 碑に刻まれている句は、1688(貞享5)年に芭蕉が詠んだ「草いろいろおのおの花の手柄かな」で、句意は「改めてよく観察してみると、秋の野の千草にもいろいろな種類があり、しかもそれぞれ見どころのある美しい花を咲かせ、手柄を競っているよ」というもの。旅立ちにあたり、門人に別れを告げる際に詠んだという。

 1983(昭和58)年11月11日、来日していたレーガン大統領は、衆議院本会議場で行った演説の中でこの句を引用し、「自由こそ全ての人を豊かにする多様性と創造性を育むものである」と述べた。この出来事に感激した上野ロータリークラブ(RC)は翌年1月、創立30周年記念事業として図書館新築に合わせた芭蕉句碑の建立を決め、日米両国首脳にも一筆求めた。応じた当時の中曽根康弘首相は「草いろいろ」の句を墨書し、レーガン大統領は英訳文に添える署名を寄せ、句碑は両国トップの協力で完成したのだった。

 同RCの当時の記念事業委員で現在は最古参会員の澤野周勇さん(91)=サワノ楽器店会長=は「芭蕉さんは世界で知られ、米国大統領にまで影響を与えた。その偉大さを、地元としてこれからも顕彰していかなければ」と思いを語った。

 同RCはこの他、創立10周年で上野市駅前に芭蕉像、創立60周年で近くに芭蕉顕彰碑を建てている。

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