【発行した「NAGI」94号を手にする吉川さん(右)と坂さん(提供写真) 】

 自然や歴史、建築、料理など、三重県内に関わりの深い書籍・写真集を出版する月兎舎(伊勢市馬瀬町)が、9月発行の季刊誌「NAGI」94号で、俳聖・松尾芭蕉を初めて特集した。実際に「おくのほそ道」紀行での立ち寄り先や、県内にある句碑、伊賀地域の芭蕉ゆかりの場所などを訪ね、芭蕉が確立した「蕉風」の世界や生涯を紹介している。

 「日本を代表する俳人で、名前や句は知っていても、名句が生まれた背景は知らないのでは」。今回の企画「松尾芭蕉への旅」は、発行人の吉川和之さん(61)と、俳人でもあるライターの久世伸子さん、伊賀地域在住のライター佃弘子さんの3人が、昨秋から1年がかりで取材を進め、約40ページにまとめたものだ。

 東京の深川から岐阜の大垣までの「おくのほそ道」をたどる旅は計7日間、吉川さんがツーリング仲間とともにバイクで回った。日光や平泉、象潟、市振など、代表句が詠まれた場所を写真とともに解説しており、印象的だった場所には「閑さや岩にしみ入蝉の声」を詠んだ立石寺(山形市)を挙げる。

 「芭蕉さんのふるさと伊賀上野」と題したページでは、伊賀地域にあるゆかりの史跡や市街地の飲食店などを紹介。吉川さんは「関連施設が点在し、ここが芭蕉顕彰の拠点、という訴求力が弱い気もするが、ゆかりの場所を訪ねて城下町を巡ってみたくなる」と訪ねた印象を話す。

 吉川さんと編集人の坂美幸さんは「芭蕉の句は、没後300年余りを経ても色あせることがない。芭蕉の旅や生涯を通して、現代にも通じる『不易流行』の思想を少しでも伝えられたら」と話していた。

 「NAGI」94号は104ページで、税込み720円。県内の主要書店で販売している。

 問い合わせは月兎舎(0596・35・0556)まで。

2023年9月23日付852号7面から

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