三重県名張市本町で100年以上続く履物店「萩岡商店」で3年ほど前、5代目の萩岡規佐子さん(61)も、先代で母の富子さん(87)も知らない、新旧約500足の下駄の台やコッポリなどが出てきた。「昔の人たちの暮らしぶりや生活の一端を見られて興味深い」と語る2人は「今でも履けるものなので、履いて頂けたらうれしい」と考えている。
同店の創業は1897年だが、江戸時代から「酢屋の下駄屋」の愛称で親しまれ、十数代にわたって営まれてきた。すぐ近くの名張川で花火が打ち上がるころには、浴衣に合わせるための子どもから大人までの下駄がずらりと並び、盛夏の訪れを告げてきた。
店舗兼住宅の2階で見つかったのは、明治から昭和初期ごろに作られたもので、足を乗せる箇所が足になじむよう流線形になり、前後の歯の高さが異なる下駄の台や、畳表で側面に金や螺鈿の蒔絵が施されたコッポリなど、今では珍しい品も多数出てきた。戦後の日本を描いたテレビドラマなどで見かけた下駄もあったといい、「見栄を張るために履いていた」とされる、幅約15センチもの幅広の男性用下駄も出てきた。
忙しさに紛れ、2階の棚の掃除や整理が十分できていなかったが、3年ほど前、屋根の修理が必要になって片付け始め、商品の入った箱を全て出していた時に出てきたそう。規佐子さんは「時代を感じさせる数々だが、2階は風通しが良く保存状態も良いので、新しい花緒をすげ、足のサイズに合わせれば今でも履ける。興味のある方は一度見に来て」と話していた。
問い合わせは同店(0595・63・0566)まで。
2023年8月26日付850号6面から
- Advertisement -