【芭蕉の生家の前で、手作りの本を持つ澤田さん】

 三重県名張市美旗町南西原の澤田二郎さん(72)がこのほど、「芭蕉と兄と仲間たち」と題した本(A4判208ページ)を手作りし、伊賀市上野図書館(上野丸之内)に寄贈した。

 大阪市出身で元大阪府庁職員の澤田さんは1985年、34歳の時に名張に移住。60歳で定年退職してから「ふるさと学習なばり学」のゲストティーチャーをしながら、地元の美旗古墳や観阿弥に関する本を製作し名張図書館などに寄贈してきた。

 今回は初めて伊賀市出身の俳聖松尾芭蕉に挑んだ。「芭蕉に関する本は2100冊ほどあるのを知り、正直怖くなった。しかし家族のことに焦点を当てたものは少ないため、そこに視点を置き、“人間芭蕉”を書こうと思った」と動機を話す。

 知人からもらったという芭蕉の著書や文献の他、漫画本も含めて30冊ほど読みあさった。昨年12月には自分なりにまとめて構想を練り、今年の1月から執筆にとりかかり5月には完成した。

 本には6人兄弟の次男として生まれた芭蕉が、父の他界後、長男が家族の面倒を見るようになると3人の妹の世話をせざるを得なくなったこと。その後、藤堂家に仕え、29歳の時に兄の勧めで江戸に出て、日本橋など住居を転々としたこと。最後に深川を拠点に弟子と各地を旅し、紀行文をまとめ51歳で亡くなるまでを会話調で平易につづっている。

 澤田さんは「幼年時代の生活ぶりや藤堂家での奉公など不明な点も多いので、想像も加えながら執筆した。一気に読めるので、中高校生にもぜひ手に取ってほしい」と話している。

 本は伊賀市上野図書館の他、伊賀市観光案内所(上野丸之内)で閲覧できる。

 問い合わせは澤田さん(090・6365・3566)まで。

2023年7月15日付847号16面から

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