【大来皇女万葉歌碑の墨入れ作業をする「大来皇女をしのぶ会」のメンバー=名張市夏見で】

 三重県名張市の国史跡・夏見廃寺跡で6月21日、敷地内にある大来皇女(おおくのひめみこ、661-702年)万葉歌碑の文字が読みやすくなるよう墨を入れたり、歌碑周辺の清掃をしたりする作業があった。

 大来皇女は天武天皇の娘で、初代斎王として伊勢神宮に仕え、万葉歌人としても知られる。皇女の発願で建立された昌福寺が、現在の夏見廃寺とされている。

 作業を行ったのは、皇女を顕彰する市民団体「大来皇女をしのぶ会」。同会は1995年に歌碑を建立した実行委員会の後身の団体で、皇女をしのぶ「あしび忌」の開催や事績を後世に伝える絵本の制作などの活動をしてきた。

 歌碑には、謀反の疑いをかけられて自害させられた弟の大津皇子(おおつのみこ)をしのんで皇女が詠んだとされる和歌「磯の上に生(お)ふる馬酔木(あしび)を手折(たお)らめど見すべき君が在りといはなくに」が刻まれている。建立時に文字彫刻に墨が入れられ、15年ほど前にも同会が塗り直していたが、雨風にさらされるため下部を中心に色が落ちていた。

 この日は同会のメンバー10人ほどが集まり、筆を使って黒い専用の塗料を文字の窪みに慎重に塗り込んでいった。代表の菅井照代さん(68)は「前回の墨入れからかなりの時が経っていたので、奇麗になって良かった。これを機に、活動を更に盛り立てていきたい」と話した。

 同会は2020年までの約6年間は一時休会していたが、歌碑建立から30年となる2025年に向け、記念事業として同寺跡をペットボトルで作った照明でライトアップする取り組みを進めている。新たな活動への展開をきっかけに若い世代のメンバーも加入しているといい、今年はライトアップの規模の更なる拡大を目指している。

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