【開花し茶色に染まった竹林=名張市神屋で】

 三重県名張市神屋の県道蔵持霧生線沿いで、竹が一斉に開花した。ハチク(淡竹)とみられ、開花は120年に1度とも言われている。珍しい現象に、住民らが驚いている。

 県道沿いののり面約200メートルにわたって竹林が茶色に染まり、遠目に見ると枯れているようにも見える。近付くと稲穂に似た形の3センチほどの大きさの花が、枝先に無数に付いている。

花の拡大=同

 近くにある「くにつふるさと館」の職員、中野博さん(73)によると、花は4月に咲き始めた。「竹やぶが茶色になっていったので、皆で不思議に思っていた。高齢者からは『不吉だ』などと心配する声も上がった」と話す。

 竹の生態を研究する東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林の久本洋子助教によると、ハチクは文献から、およそ120年周期で開花していることが分かっており、前回の開花は1908年ごろだった。次の開花のピークは2028年ごろとされていたが、多少のずれがあり、10年ほど前から各地の開花情報が入っているという。

 開花の詳しいメカニズムは今も分かっていないが、久本助教は「環境が違っても開花するので、何か時計遺伝子のようなものがあって、120年経つと開花のスイッチが入るのではないかと推測している」と話す。

 開花後、地上の部分は徐々に枯れていくが、地下茎は完全には枯れない。来春には一部でタケノコが生え、再び花が咲くこともあるという。

 久本助教によると、竹の開花を「不吉」と心配する声は各地で上がるという。「竹林が枯れると竹材が不足し困ってしまうため、昔から不吉と言われてきたのかもしれない」と話した。

 なお、同じ120年周期のマダケ(真竹)は1950年から60年ごろに全国的に開花した記録があるという。中国から持ち込まれたモウソウチク(孟宗竹)は、開花周期がハチクやマダケよりも短い67年に1度とされる系統がある。

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