「耕作放棄の茶畑をなんとかしよう」と頭を悩ませていた三重県名張市蔵持町芝出の中森晃一さん(68)が、茶の実を利用した油を商品化、今後の展開に期待を寄せている。
山添村出身の中森さん。2003年に父が亡くなった後、実家近くの茶畑が荒れ始め、周囲にも放棄地となった茶畑が増えるようになった。
「何か良い方法がないか」と茶の木を炭焼きにしてみたりもした。試行錯誤するなか、放棄茶畑では新芽を摘まれることがなく、秋には花が咲き、その1年後には大量の実をつけることを知った。「『ただ』でいっぱいある実を何かに出来たらおもしろいんじゃないか。地域起こしにもなるかもしれない」という構想がひらめいたという。
更に「実を絞ると高品質な油が取れる」ことをネットで知り、搾油機を購入。試しに絞ってみたところ、実際に油が出ることを確認した。
本格的に取り組みを始めたのは、65歳で退職した20年から。中森さんの母校でもある旧東豊小学校舎を利用した東豊ベースという地域おこし事業も立ち上がり、そのメンバーたちと一緒に挑戦することになった。
先駆者とされる講師のワークショップを受講するなど研究を重ね、21年7月には「茶の実オイル研究所」を設立。22年秋には、整備した約5千平方メートルの茶畑から約400キロの実を収穫。乾燥させ、外皮をむき、砕いて搾油した。食用にもなる貴重な油という意味を込め「茶のみのり」と命名。食品や菓子の素材として注目され始めているそうだ。
また、化粧品としても商品化。メンバーの澤智実さんが名付けたブランド名「Chaaami」としてマルチバーム、ネイルオイル、石けんの3品を今年2月から販売。浸透性、保湿力に優れているそうで、べとつかず肌になじむことから、アトピーや乾燥肌の人に喜ばれているという。
「故郷が荒れるのは嫌だ。茶畑を再生したい」という思いから始めた中森さんは「地方創生として地元の物産を作っていきたい。ここ東豊に人が集まり、いろんなことができる場所になれば」と今後の展開に期待を寄せる。
研究所では、茶の実シーズンの秋に実を絞り、保湿クリームを作るワークショップを随時開催している。参加費は1人3000円。
申し込み、問い合わせは同研究所(0743・87・0302)まで。
2023年5月27日付844号24面から