【作品を手にする田中さん=伊賀市柘植町で】

伊賀市柘植町 田中重之さん(82)

 高校教員を退職後、趣味にしている切り絵の腕を発揮し、郷土かるたの制作に携わったり、切り絵教室の講師として地域住民に切り絵の手ほどきをしたりしている。

 郷土の歴史・民俗を読み込んだ「柘植のホント!かるた」は、柘植地域まちづくり協議会と地元市民グループ「ランプの会」が2014年に作成したもので、読み札の句は、地元の郷土史に明るい元国鉄職員の梅田徹さんが担当し、田中さんは絵札を切り絵で制作した。これを機に「更に柘植の歴史を調べてみたい」と思うようになったという。

 この後、同協議会主催で開かれた「柘植の歴史と文化講演会」で3回ほど講師を勤めた際、かるたや講演会の話を冊子にまとめることになり、執筆の依頼を受けた。地域の郷土史家が集めた言い伝えなどの資料を整理編集した「柘植の昔ばなし」(A4版90ページ)が完成し、21年に同協議会が発行した。児童にも分かるようやさしく書かれており、柘植小の4年生以上と柘植中の生徒に郷土資料として無償で配布された。

 現在ライフワークとして取り組んでいるのは、B4サイズの「切り絵伊賀百景」の制作だ。2014年ごろ、切り絵の題材を考えている中で思いつき、「人生の生きがいに」と取り組み始めた。伊賀市内各地の風景や行事を写真に撮って帰って下絵を起こし、伊勢型紙専用の黒い渋紙を重ねてカッターで切り抜いていく。格子戸や屋根瓦など、小さくても一つひとつ切り抜く繊細さに、作品を見た誰もが驚くそうだ。

 「無理だと思っていた百景(100作品)というゴールも、ようやく89作目の大村神社(同市阿保)まで仕上がった。完成したら画集にまとめたい」とにこやかに話した。

2023年4月22日付842号10面から

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