【ビニールハウス内で作業する北川さん夫妻=伊賀市石川で】

 会社員から農家に転身し、農場「ファーマーズキタガワ」を営んで10年になる三重県伊賀市石川の北川敏匡さん(39)。妻の希美さん(34)と二人三脚で育てるイチゴが好評だ。

夫妻が育てるイチゴ

 農家になり、トマト、米、イチジクなどを育てるなか、「冬作で何かを」と試してみたのが2017年に品種登録されたばかりの新しいイチゴ「よつぼし」だった。「味も形も香りもいける」と今までにない可能性を感じ、翌年200平方メートルのハウスで栽培を始め、次の年には1000平方メートルに増やした。

 イチゴは7月初旬に苗を植え付け、12月中ごろから翌5月ごろまでが出荷時期。作業を支える要となるのは希美さんだ。「農業が面白く、こんなに『はまる』と思っていなかった」と管理作業の合間も手を休めることなく笑顔を向ける。

 ピーク時は午前3時から北川さんの母親も協力して3人で収穫する。寒暖差の激しい伊賀地域の気候に適した品種のため「はっきりした濃い味」が出るといい、雲がなく星空が広がっている放射冷却現象の夜には「この奇麗な星が味の決め手なんだ」と感慨にふけるそう。

 3年前、静岡市を拠点に全国展開するフルーツタルト店「キルフェボン」で北川さんのイチゴを使ったタルトの販売が決まったのを機に「伊賀満天星(どうだん)いちご」と命名し、同時に商標登録した。現在、このイチゴを使った商品は同店や百貨店などにも並ぶほど評判になっている。

 今年、栽培面積を2500平方メートルに増やしたという北川さんは「会社員時代のことも生かしながらそれにプラスアルファが積み重なり、のびのびと仕事ができているのは幸せ」と話した。

2023年3月25日付840号11面から

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