リハビリで気づいた何気ない場所の歴史
三重県伊賀市上野福居町の首藤善樹さん(73)がこのほど、病気からのリハビリで足を運ぶ機会が増えた、伊賀上野城や鍵屋の辻など身近な名所の成り立ちや地名の由来を書籍「伊賀上野お散歩手帖」(A5版239ページ)にまとめ出版した。「自分がそうだったように、普段何気なく通っている場所にこんな歴史があったのかと気づいてもらえたら」と願っている。
高田短大(津市)の名誉教授で寺院史が専門の首藤さんは、3年ほど前に病気のため救急搬送されて約3か月間入院し、一時は医師から余命宣告も受けていた。その後の自宅での療養は、ほぼベッドで寝たきりの状態だったが、懸命のリハビリで少しずつ身体機能を取り戻していった。
2年ほど前には、介護で自宅へ来てくれていた介護ヘルパーとの会話がきっかけで、身の回りの事柄に関するクイズをまとめ、「ガチアンお勉強問題集」(同234ページ)を出版した。
その後、家の周囲を歩けるまでに回復し、杖をつきながらゆっくりと散歩していると、「今まで目に入らなかった街中の石碑や説明看板が目に留まるようになった」。近所の堤防沿いを散歩していた際、田んぼの中に十数本の木が茂る塚があり、近づいてみると石碑があった。読んでみると、以前あった「木興村」が1870(明治3)年の洪水の影響で移転し、「木興町」と呼ばれるようになったことなどが記されていた。
文献などでは知る機会の少ないその土地の歴史や地名の由来に触れられたことで興味が深まり、行動範囲を家の周りから徐々に広げていった。知らないことは文献で調べたり、地元の人に尋ねたりしながら、1年間で歩いた成果をまとめた。
書籍は伊賀市上野図書館、名張市立図書館などに寄贈した。伊賀市内の主な書店では1冊1000円(税込)で販売している。郵送を希望する場合は出版元の青山文芸社(0595・52・0627)へ。
2023年3月11日付839号2、3面から