【道観塚の前で祭文を読み上げる森本講長(右)=名張市赤目町一ノ井で】

 東大寺(奈良市)二月堂のお水取り(修二会)で使うたいまつを寄進している三重県名張市の伊賀一ノ井松明講(森本芳文講長)の講員らが3月10日、この地に住んで田地を東大寺へ寄進したという「道観長者」ゆかりの塚の前へ、今年2月に調製したヒノキのたいまつを運び、法要を営んだ。

道観塚へ向け講員に運ばれるたいまつ

 例年、同市赤目町一ノ井の極楽寺(中川拓真住職)から東大寺へ徒歩やバスで5荷のたいまつを運ぶ「松明調進行事」が3月12日にあり、法要は道中の安全祈願として営まれている。しかし、今年も新型コロナの影響で行事は実施せず、4月13日に講員らがたいまつを届けることになっている。

道観塚を目指す講員ら。後方は調進行事の際に徒歩で越える笠間峠の方角

 この日の法要には、講員と東大寺関係者、行事に協力する市民団体「春を呼ぶ会」、調進行事の際に一行を迎えている奈良県宇陀市の「笠間の郷を思う会」のメンバーら約50人が参加。午後1時すぎ、山伏や火天・水天役の講員らを先頭に極楽寺を出発し、南東に約500メートル離れた「道観塚」まで10分ほど練り歩き、一人ひとり手を合わせた。

柴燈護摩法要の様子

 森本講長は塚の前で「たいまつ木を調進するよう遺言されて775年、今日までその言い伝えを守り続け、今年も立派なヒノキからたいまつを作ることができた。今後とも、この地が安泰に栄えますようお守りください」と祭文を読み上げた。帰路は10本ほどの手持ちのたいまつに点火して同寺まで戻り、柴燈護摩法要が営まれた。

- Advertisement -