【棚田展望公園で調印した協定書を持つ重倉会長(左)と天津部長=伊賀市西山で】

 三重県伊賀市西山の地元自治会と、複写機やプリンターのトナーカートリッジ製造を手掛ける「上野キヤノンマテリアル」(同市三田、従業員420人)は3月9日、棚田の保全などを通じた協働活動を行う「農山村活性化の取り組みに関する協定」を締結した。「西山の棚田」は2022年に農水省認定の「つなぐ棚田遺産」に選ばれている。

 西山の棚田は、滋賀との県境にある高旗山(標高約710メートル)の麓の谷あいに広がる約26万平方メートルで、約500枚の水田群で構成。20年に国の棚田地域に指定された。1953(昭和28)年8月の水害で14人の死者や30棟を超える家屋倒壊など大きな被害に遭い、棚田も土砂や流木で埋め尽くされたが、約10年の歳月をかけて復旧した。

 西山自治会によると、地区人口は124世帯385人。2014年から地元住民らが保全活動を始め、現在は棚田米のブランド化や地域産品の特売イベントなど地域行事の開催、地元小学校との田植えや稲刈り体験などを通じた交流事業に取り組んでいる。

 同協定は県が地域活性化を進めたい農山漁村地域と、社会貢献活動や新たな商品開発などに取り組みたい企業とを仲介してマッチングし応援する「三重のふるさと応援カンパニー推進事業」の一環。伊賀市内では16年10月に市南部の高尾地区にある住民団体と地元金融機関が締結しており、今回で2例目になる。

 9日の協定締結式には仲介をした県の関係者らも出席。西山自治会の重倉純男会長は「今年2月に初めて協働で地元小学生対象のシイタケ菌打ちをした。盆踊り大会や秋の祭りなど行事がたくさんあり、一緒になってにぎわいをつくってほしい」と期待し、同社事業推進部の天津章博部長は「出張や研修で訪れる人にこの地域をぜひ知ってもらい、週末など一緒に棚田周辺や展望公園の保全活動などで協力できたら」と話した。

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