【手掛けたミニチュアと中矢さん=名張市で】

「昔思い出す」

 椅子や花器などさまざまな木工作品を生み出す、三重県名張市中知山の中矢豊彦さん(79)。数あるモチーフの中でも、子ども時代に見た景色を再現したこだわりのミニチュア作品は精巧な仕上がりで、周囲からは驚きの声が上がっている。

 老化防止を兼ね、趣味で作り始めたのが10年ほど前。自宅を改装する業者の作業を見て、制作に必要な道具の使い方を覚えたという。今は自宅の作業場や、週1回通う介護施設で作業に熱中している。

 小屋や水車で動く精米機など、記憶を頼りに図面も描かずに完成させる。柱に使う木材や屋根の樹皮は近くの山で調達してくるそうで、のこぎりやニッパーで必要な大きさにそろえて使う。

 「中矢商店」と書かれた架空の商店をテーマにした新作は、20センチ四方ほどの大きさで、ドアや窓が開閉するつくり。並べた割り箸やようじを屋根に見立て、表面にニスを塗ったり、バーナーで焼き色を付けたりと、質感をよりリアルに近づけている。

 「体のこともあるし、続けられるかな」と自嘲気味に笑うが、創作のアイデアは次々と湧いてくるそう。「作品を見るたび、昔の体験や暮らしを思い出す」と目を細めた。

2023年2月25日付838号3面から

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