【再現したハチロクと高山さん=伊賀市で(一部加工)】

細部もこだわり修理半年

 人気漫画「頭文字(イニシャル)D」で主人公が乗る「藤原とうふ店」と書かれたトヨタのスプリンタートレノ(AE86、通称ハチロク)を、三重県伊賀市ゆめが丘の自営業、高山祐多さん(31)が忠実に再現した。「20年越しの夢がかなった」と話す。

 頭文字Dは「走り屋」が題材の漫画で、「週刊ヤングマガジン」で1995年から18年間連載され、アニメ化もされた。作中では、主人公・藤原拓海の実家の店名がドアに書かれたハチロクが登場する。

 松阪市出身の高山さんは、小学3年生の時に「車の面白いアニメがあるよ」と友人に勧められて頭文字Dを見て以来、大の車好きになった。高校生の時にアルバイトで貯めた資金でハチロクを購入してからは車いじりに没頭し、作中で登場するマツダのサバンナRX‐7も所有した。専門学校で自動車整備を学ぶ傍ら、自らチューニングした愛車を鈴鹿市のコースで走らせ、ドリフト走行の技術も磨いたという。

 会社勤務を経て6年前に独立し、伊賀市山出でカーコーティング専門店を開いた。時を経て愛車は移り変わっていたが、昨年、専門学校の同期の仲間と会ったのをきっかけに、頭文字Dに登場するハチロクへの懐かしさが込み上げてきたという。

 80年代に生産終了し数が少なくなっている車だが、その夜にオークションサイトを開くと、主人公が乗っていた格納式前照灯を備えた白と黒のパンダカラーのハチロクが出品されていた。運良く入手がかなった高山さんは「漫画から飛び出してきたような車にしよう」と、物語終盤の姿を再現することに決めた。

 手に入った車体は車検が切れ、5年ほど放置された傷みの激しい状態だった。修理に半年ほどを費やし、エンジンや点火プラグ、燃料タンクなど多数の部品を交換。高い走行性能をよみがえらせた。

 実家に眠っていた単行本を再び読み込み、参考になる資料もそろえて確認。看板店を営む友人に「藤原とうふ店」の文字のステッカーを作ってもらい、貼り付けた。

外出先で話題に

 ドアバイザーや泥除け、微妙な車高など、ファンにも見落とされがちな細部にまでこだわった。車内には補強パーツのロールケージや、1万1000回転の目盛りまで表示されたタコメーター、主人公がドライビング技術を磨くシーンで登場した紙コップ入りのドリンクホルダーまで取り付けた。

 完成したハチロクに乗ってコンビニに出掛けると、話し掛けてくる人が相次ぎ、「子どものころからずっと好きだった車だ」と感極まって泣き出す人までいたという。高山さんは「街で見掛けた人に喜んでもらえたら。春には妻と娘を乗せて物語の舞台の群馬県に出掛け、聖地を巡ってみたい」と構想を膨らませている。

 今後は店のインスタグラム(@beautifulcarmakesemotion)でハチロクの魅力などを発信していくという。

タコメーターとドリンクホルダー
- Advertisement -