【ラーメンを提供する西岡さん=伊賀市青山羽根で】

 25歳で構えた念願のラーメン店は、2年後に交通事故で負った重傷がもとで閉店を余儀なくされた。三重県名張市富貴ケ丘の西岡晴光さん(43)はそれから十数年、後遺症に苦しみながらリハビリを続け、一時は畑の違う仕事にも就いたが、「やはり自分にはこの道しかない」と今年1月、伊賀市内にラーメン店を再びオープンした。「支えてもらった家族や友人、店へ足を運んでくれる方の声に応えたい」と気を引き締めている。

 16歳のころにラーメン店でアルバイトをした経験から、自分の店を持つことが人生の目標だった。名張市内で開いた店には、最初に覚えた長渕剛さんの代表曲「とんぼ」の名を付け、なじみの客も増えていった矢先、思いがけない出来事が待っていた。

 交差点で右折待ちをしていた西岡さんの原付バイクに後続の車が衝突し、腰と頭を強打。目が覚めたのは3日後で、入院は2か月、通院は半年近くに及んだ。体調はほぼ事故前と同様に戻ったものの、慣れない仕事はなかなか続かず、周囲との人間関係に悩む時間も短くなかった。

 飲食店でも勤務し、模索する日々の中で、「もう一度、自分の店をやれないか」という思いが強まり、1年ほど前から再開に向け準備に取り掛かった。店内の工事や修繕には、母やきょうだい、昔からの友人たちが力を貸してくれ、秋にはプレオープンにこぎつけた。

 新店名の「らん」もまた、大好きな長渕さんの曲「RUN」が由来。「止まっているわけにはいかない。走り続けたい」。そんな決意を込めた。事故から15年以上経った今でも、天候や体調によって肩や全身がズシッと重苦しい後遺症に悩まされることもあるが、「また来るわ」の一言が支えになっている。

 前の店で看板だったスタミナラーメンやとんこつラーメンは健在。「昔からの自分や前の店を知っている方が再び顔を見せてくれ、初めて食べた方が再び来てくれる。どちらも、店を再開できたからこそ感じられるありがたさ。再びしっかり歩み、走っていけたら」と力を込めて話した。

2023年2月11日付837号14面から

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