【竹の歯ブラシを手にする森内さん(左)と西原さん。コップ内は竹とポリ乳酸を混ぜた樹脂ペレット=伊賀市蔵縄手で】

【伊賀の底力】ベビー用から介護用まで70種類製造販売 ファイン株式会社

 ベビー用から介護用まで自社だけで約70種類を製造販売する歯ブラシメーカー「ファイン株式会社」(本社・東京都)は、三重県伊賀市蔵縄手の自社工場で地球にも人にも優しい「竹の歯ブラシ」を製造している。材料となるのは、工場の隣で育った竹だ。

 同社は、1973年の創業から今年で50周年を迎えた。前身は、大阪市でろうそくの製造販売を手掛けていた会社の一事業部門だった。創業以来、自社の歯ブラシの他、OEM(受託製造)やODM(受託開発)も手掛けてきた。

 98年には、紙とバイオプラスチック「ポリ乳酸」を混ぜて柄の部分を作った歯ブラシを開発。ポリ乳酸はトウモロコシなどの植物を原材料とし、最終的に水と二酸化炭素に生分解されることから、エコな素材として注目が高まっている。

 時代の先を行く試みだったが、強度に難があったこともあり、販売数は伸びなかった。一方、石油系樹脂の歯ブラシを使うと体調が悪くなる「化学物質過敏症」の人からは、根強いニーズがあった。

売上50倍に

 その後、竹を砕いた粉とポリ乳酸を混ぜた樹脂を柄の材料に導入。強度は紙を混ぜたものよりも高まり、2008年に竹の歯ブラシとして発売した。14年からは伊賀工場に隣接する竹林からハチク(淡竹)を社員が伐採し、材料を採取している。竹は名張工場(名張市西原町)で粉砕して複合樹脂にしてから、協力工場で柄の形に加工。伊賀工場で植毛や毛先の調整、検品、包装などの工程を経て出荷される。

竹の歯ブラシの植毛工程

〈YouTubeでショート動画(https://youtube.com/shorts/SVNHaVhmKlM)〉

 近年はSDGs(持続可能な開発目標)やプラスチックごみによる海洋汚染問題への関心の高まりなどから、世界的にエコ商品が注目されている。同社は流れに乗るべく、エコ歯ブラシの自社ブランドを「地球を巡る」をコンセプトとした「MEGURU」としてリニューアルし、パッケージなどを改めた。こうした取り組みもあって、ここ2、3年で竹の歯ブラシの売り上げは従来の50倍に跳ね上がったという。

包装は竹紙を採用

 一新したパッケージは、従来のポリプロピレンフィルムの包装を竹紙に変更し、「伊賀育ちの竹の歯ブラシ」の言葉もあしらった。デザイナー兼事務の森内綾子さん(40)は「少しでもプラスチックを減らそうと、竹紙を採用した。デザインは一目見ただけで、国内で作られたものだと分かるよう心掛けた」と話す。

 竹の歯ブラシは、柄の部分が植物由来の材料であることから、時間の経過とともに分解が進んで強度が落ちていく。そのため、同社は独自に2年間の品質保持期限を設け、刻印して販売している。毛の部分は、脱プラスチック生活を実践する人や化学物質過敏症の人など、使う人のさまざまな生活スタイルに対応できるよう、豚や馬の毛、植物由来のひまし樹脂毛、超極細毛の4種類を用意している。

植物由来樹脂の新開発も

 また同社は一昨年、名張工場に樹脂製造の設備を導入。それ以前は他社に委託してきた竹から複合樹脂を作る工程を、自社でできるようになった。竹以外の素材を用いた新たな植物由来樹脂の開発にも着手しており、ヒノキを使った歯ブラシも新たに商品化した。技術部門の西原和孝さん(46)は「これからもエコに特化した商品開発に取り組み、お客さまが欲しいと思うものを伊賀から生み出し続けたい」と話した。

竹の歯ブラシ(ひまし樹脂毛)

 竹の歯ブラシは同社のオンラインストアや全国のエコショップで販売している他、伊賀市のふるさと納税の返礼品にもなっている。

読者プレゼント

 ファインから読者5人に、竹の歯ブラシ(ひまし樹脂毛)1本(オンラインストアでは税込み715円)のプレゼントがある。希望者は、はがきに郵便番号、住所、氏名、電話番号を明記し、「〒518‐0729名張市南町834の1 伊賀タウン情報YOU編集部 竹の歯ブラシプレゼント係」宛て、2月18日必着で申し込む。ファクス(0595・62・1550)、電子メール(you-h@iga-younet.co.jp)でも可。

2023年2月11日付837号1面から

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