【英国にある木谷さん(右)宅を訪れた吉田選手。背後は吉田選手ら契約する選手たちから贈られたユニホームの一部(木谷さん提供)】

「足」武器に施術

 三重県伊賀市出身で英国ロンドン在住のスポーツトレーナー、木谷将志さん(37)は、開催中のサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会の日本代表DF吉田麻也選手(34)=ドイツ・シャルケ所属=を始め、数か国の代表選手と個人トレーナー契約を結んでいる。日本で培った繊細な技術は、世界のトッププレーヤーから認められている。

木谷さん(左)の施術に魅了されたデンマーク代表MFホイビュルク選手(木谷さん提供)

 木谷さんは上野東小4年の時にサッカーを始め、県立名張西高(現名張青峰高)サッカー部ではMFとしてプレー。卒業後は大阪のスポーツトレーナー専門学校を経て、サッカーや野球、相撲などのプロアスリートが来院する、神奈川県に本院がある治療院で働きながら技術を磨いた。

 名古屋市内の分院長を任されていた2013年、英国のイングランドプレミアリーグ、サウサンプトンでプレーし、一時帰国していた吉田選手と出会った。当時、吉田選手は股関節痛に悩んでいたが、木谷さんの施術を受けて回復に向かい、これをきっかけに個人トレーナーを務めるようになった。その後は名古屋で働きながら、吉田選手の求めに応じて日本と英国を行き来。15年に独立した時には、英国での活動が年間の3分の1を占めていた。

「なにそれギャグなの」と言うプレミアリーガー 次々魅了

 木谷さんの施術の一番の特徴は、相手の体を足で踏む手法を採り入れている点。足をリズムよく使うことで、手では出せない体の反応を生み出せるという。

冨安選手(左)と並ぶ木谷さん(木谷さん提供)

 吉田選手はチームメートにも木谷さんを紹介したが、欧州では足を使った手法が珍しいため「なにそれ、ギャグなの」などと奇妙に思われてしまったという。ところが試しに受けた選手は木谷さんの施術に魅せられ、次々に身体のケアを頼むようになった。

 プレミアリーガーの顧客が増えるなか、木谷さんは活動拠点を英国に移すことを決断。19年に妻と幼い2人の子どもを連れて移住し、ロンドンにある日系クリニックの経営権を取得した。

 現在は吉田選手の他、同じ日本代表のDF冨安健洋選手(24)=イングランド・アーセナル=やMF南野拓実選手(27)=フランス・モナコ=といった欧州でプレーする日本人選手、W杯カタール大会でプレーしたデンマーク代表MFピエール=エミール・ホイビュルク選手(27)、イングランド代表DFルーク・ショー選手(27)、ポーランド代表DFヤン・ベドナレク選手(26)、ウェールズ代表DFベン・デイビス選手(29)といったトッププレーヤーに対し継続的に施術している。リーグ戦やカップ戦で試合が続く時期は、1人に対して週に4回施術することもあるという。

挑戦 父の言葉が後押し 木谷さん「子どもの夢応援して」

南野選手(右)と並ぶ木谷さん(木谷さん提供)

 木谷さんは、高校卒業を前に進路を悩んでいた時、父親から「なんでも挑戦しろ。ただし、自分の子どもに胸を張れる仕事に就け」と背中を押された。トレーナーの道に進んだのは、この言葉がきっかけだと振り返る。

 東京五輪に出場する吉田選手とともに帰国した昨年7月には、伊賀市のサッカーチームの集いで「挑戦するから笑顔になれる」をテーマに講演。参加した子どもたちに向けて「世界を見てほしい」、保護者らに向けては「子どもの夢を応援してあげてほしい」と訴えたという。

 木谷さんは「まさか自分がプレミアリーガーの施術を担当するとは思ってもみなかったので、人生は何があるか分からない。今後は、日本人のトレーナーの評価を世界で更に高めつつ、視野を広く持ち挑戦することの大切さを次の世代に伝えていきたい」と語った。

2022年12月10日付833号1面から

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