【自宅の庭で愛用の防水カメラを構える松永さん】

 読売新聞社の写真部で報道カメラマンとして長年活躍し、米寿を迎えた現在も毎日カメラを手放さず、移りゆく地域の姿や草花の四季を静止画や動画に撮り続けている三重県名張市西田原の松永悳三さん(88)。60年間ほど撮りためた作品は膨大な数で、「多くの方に見て頂けるようウエブサイトなどに投稿したい」と話している。

新聞社時代は科学写真専門

 同市生まれで、名張高から東京農業大に進み、農業、物理、地学などの研究に没頭した。趣味の撮影技術を生かし、研究室で資料をスライド用に撮影する毎日だったという。

 「私は科学写真が専門で、カメラマンとしては異質」と話す通り、25歳で同社の写真部に配属されてからも、事件より公害問題や深海探索などの科学的なテーマを中心に追いかけてきたという。「記事は後で直せるが、写真は一発勝負。失敗が許されないので、科学の分かる専属カメラマンとして重宝された」という。現役時代には「百花歳時記」シリーズの「春夏」「秋冬」と「育てオオタカの赤ちゃん」などの著書も発刊した。

退職後は地域の自然を記録「営み知らないと撮れない」

 60歳で定年退職し、70歳で帰郷。現在の愛機は一眼レフと小型で防水機能付きのデジタルカメラ2台。自宅の前庭や裏の畑で栽培した季節の植物や野菜、訪れた昆虫などを主役に、防水カメラを三脚にセットして定点で撮影を続けている。

 「自宅周囲のフィールドを記録するのは自分しかいない」と語る松永さんの作品は、いずれも生命力に満ちあふれている。ヤマユリの花弁に侵入するカタツムリ、スイカの花の蜜を吸う蜂、ヒマワリと夏雲の対比の記録など。「自然の営みを知っていないと良い写真は撮れない」と言い、「毎日草花と話しながら最高の一瞬を待っている」そうだ。

 9月の中秋の名月には、ツキミソウの手前にカメラを構え、夕方つぼみが開き始めてから、1分間隔で約3時間、花が咲くまでを名月を背景に撮影した。

 今、熱中しているのは「秋の七草」の写真や動画をアカデミックな解説と一緒に編集すること。ユーチューブやタウン紙の動画サイトに投稿する計画だ。また地域の記録を残すため、食味の最高評価「特A」を受賞した伊賀米の栽培過程を動画に収めている。

 妻の美貴子さん(81)は「晴れた日には庭でカメラを手放さず、雨の日はパソコンの前で朝から晩まで編集作業に没頭している。『目が疲れないの』と、いつも気遣っている」と笑う。松永さんは「好きなことをしているから毎日が楽しい。終活ではないが、これまでに蓄積したものをどう生かしていくか、今はそのことで頭がいっぱい」と日焼けした顔で話した。

撮影した写真や動画を編集する松永さん

2022年10月22日付830号1面から

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