自然豊かな三重県伊賀市槙山の工房で作陶する伊賀焼作家の須釜優子さんが、煙をほとんど出さない「無煙薪窯」を自ら新設し、改めて創作意欲を燃やしている。
幼少期をインドネシアとシンガポールで過ごした須釜さんは、日常的に使う器を自作する現地の住民から影響を受け、陶芸に興味を持った。帰国後は京都の伝統工芸大学校で陶芸の基礎を学び、本で見た伊賀焼に魅せられ、同市の伊賀焼作家・谷本洋さんに師事。13年間の修業の末、2018年に開窯した。
独立後は灯油窯で作陶していたが、念願の薪窯を造ることを決意。構想段階で「黒煙やススが出ない窯が作れないか」と思案していたところ、長野県の宮大工兼陶芸家・北村幸雄さんが無煙薪窯の特許を取得していると知った。
窯造りは北村さんの指導で7月中旬から開始。耐火レンガを一つひとつ積み上げ、10日間で完成させた。新しい窯は幅1・2メートル、奥行き3メートル、高さは煙突を含めて5メートルほど。発生した煙を再度燃やす「二次燃焼」によって煙を抑える仕組みで、多様なたき方ができる細工を施し、「作品にさまざまな表情をつけることが可能」だという。
須釜さんが手掛けるのは、幾何学的な模様をデザインした皿や茶道具などの生活雑器が中心。新しい窯を前に「環境に良く、ご近所さんにも配慮ができる理想の窯が完成した。思う存分創作ができる」と話した。
2022年9月10日付827号1面から
- Advertisement -