終戦から77年となる8月15日、戦争の記憶を忘れないようにと、終戦間際に米軍のB29爆撃機が墜落した三重県名張市青蓮寺で平和を祈る集いが営まれ、住民ら約80人が参加した。死亡した搭乗員や地元戦没者を追悼し、平和の象徴とされるハトを空に放った。
1945年6月、神戸空襲の帰途に日本軍戦闘機の攻撃を受けたB29が、同地区の山中に墜落。搭乗員11人は2人が死亡し、残る9人はパラシュートで脱出したが、その後日本軍に処刑されたという。2006年、青蓮寺にある地蔵院の耕野一仁住職(73)が地区の協力を得て墜落現場に追悼碑を建立し、同院と名張ユネスコ協会、市宗教者連帯会が毎年集いを共催している。
この日、耕野住職は碑の前で「戦争の面影はなお一層遠くなりつつあるが、戦争を憎み、平和の大切さを後世に伝えることを約束する」と追悼の言葉を述べた。
在名古屋米国領事館のマシュー・センザー首席領事も21年7月の着任後初めて参列し、地元住民らとともに碑に献花。同院境内で行われた式典では「戦時中に犠牲となった全ての皆さまに哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りする。過去を共有し顧みることで世界の平和と安定を実現できると信じている」と日本語であいさつした。
ミニコンサートや放鳩などの後、参列者は黙とうを捧げ、世界平和を祈って境内の鐘を77回突いた。放鳩に加わった市立赤目中2年の岡田理沙さん(14)は「私のおじいちゃんやおばあちゃんも戦争は経験していない。いろんなことを知ろうと思って参加したが、地域の人たち皆が戦争の悲しみを共有する様子を知り、とても温かみを感じた」と話した。
広島県尾道市から参列した会社員、浜本顕さん(53)は、三重県で働いていた11年前から毎年参加しているといい、「日本兵だった祖父は戦時中にフィリピンで捕虜になったが、米兵に親切にしてもらっていた。母国に帰れなかった墜落機の米兵を含め、敵味方なく犠牲者を追悼することはとても良いことだと思う」と話していた。