【発行した本を手にする曽和さん】

 「欲しがりません勝つまでは」を合言葉に、「幼い時から戦争一色だった」と語る三重県名張市桔梗が丘1番町の曽和道子さん(94)が、このほど当時の記憶を1冊の本に書き記した。「平和な世の中がいつまでも続きますように」との願いを込めている。

 「私の人生を振り返った時、忘れられないのはやはり戦争時代に学生生活を送ったこと」と曽和さん。女学生時代は勉強より作業や開墾、訓練の時間が増え、4年生の1年間は学徒動員で久居にあった軍需工場に住み込んで土日も夏休みもなく働いた。

 父は終戦の7日前に爆撃に遭い命を落とし、戦地に赴いた兄の復員もかなわなかった。「戦争の悲惨さ、平和への願いを体験者として話すだけでは消えてしまう。書き残すことによって経験していない人に知ってほしい」と、今年2月から執筆を始めた。

 「わたしの戦争体験‐平和への思い‐」と題した本はA5サイズ65ページで、誕生月の7月に発行した。当時の状況や心情を赤裸々につづり、わかりやすくまとめたつもりだという。完成品を知人らに配ったところ、「よく書いてくれた」と感謝されたそうだ。

 曽和さんは「犠牲になるのは国民。二度と戦争はしてはならない」と語気を強める。「平和な暮らしが当たり前になっている現代。戦争を体験していない世代に平和がどんなに素晴らしく、ありがたいかを知ってほしい」と市内の小中高校などに置いてもらうよう手配している。

 名張市立図書館(桜が丘)にも寄贈しており「ぜひ手に取って、今一度平和について考えてほしい」と訴えている。

2022年8月13日付825号23面から

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