【畑で収獲した野菜を手にする北口さん=奈良県曽爾村塩井で】

退職後に大学校へ 野菜作り基礎から学ぶ

 三重県名張市内で鍼灸師として40年近く働いてきた北口直子さん(65)は退職後、奈良県曽爾村塩井の実家に放置されていた畑を整備し、野菜の収穫体験などができる「BABAガーデン」を開設した。農業経験はゼロだったが、一念発起して64歳で大学校に入り、野菜作りの基礎を学んだ。採れたて野菜で作るピザは内外から訪れる家族連れや学生らに人気だ。

採れたて野菜で作るピザ

 高校進学で実家を離れ、大阪の専門学校を卒業。同市で鍼灸師として働いてきたが、5年前に父の看病のため帰郷し、仕事も2年ほど休むことに。同じ職場で働く次男から「仕事は任せて、好きなことをしたら」と勧められたのを契機に、仕事を終える決意をした。

 海外旅行など、時間ができればやりたいことはいくつもあったが、コロナ禍で活動は制限され、一時は落胆気味だった。そんな時、友人らと庭で野菜やピザを焼いたのをヒントに、放置していた畑を活用しようと、野菜の収穫体験ツアーの実施を決めた。

 農業に関する知識をつけるため、奈良県内の大学校で昨年4月から約8か月、野菜作りの基礎を学びながら、庭の整備も進めていった。荒れてしまった約300平方メートルの畑を耕し、大きなビニールハウス2棟を建てた。「特に夏は草刈りが大変」と苦笑いするが、次男も応援に駆け付けてくれている。

「感動」皆で共感して

 畑にはトマトやナスなど一般的な野菜から、マイクロキュウリやミニキャロットなど、スーパーなどではあまり見かけないものも。「いろんな野菜を収穫してほしい」と、ミニトマトも形や色が異なる4種類を栽培し、全体では30種類を超える。

 「農家1年生」を自称し、「たくさんの種類を育てるのは大変で、育てながら学ぶことも多い」と語る北口さん。水やりの量や気温の調整で失敗した経験もあり、育て方が分からない時は、近所の頼れるベテラン農家の人たちからアドバイスをもらっている。

 体験ツアーで採れる野菜は季節によって異なるが、収穫後は、秋には山菜ごはんや天ぷら、夏にはピザやカレーなども調理。ツアー体験者と一緒になって賑わう姿が、北口さんのインスタグラム(@babagarden_naoko)に投稿されている。「野菜が育っていく過程を見る機会の少ない人には新鮮な体験ができる。自分が野菜作りで味わった感動を皆さんで共感してもらえたら」と笑った。

2022年7月30日付824号1面から

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