【タブレットの操作を教える田中さん(右)=山添村で】

児童・教職員の助けに

 かつて勤務した奈良県内の小学校などで「ICT(情報通信技術)支援員」として、新型コロナの影響で導入が進んだリモート授業への対応や、タブレット端末を使った授業の指導補助、教職員向けの活用指導などに携わっている、三重県名張市百合が丘東6の田中強一さん(62)。培ってきた経験や知識を生かし、勤務校へ〝恩返し〟を続けている。

動画を編集する児童

 大阪市出身で、奈良県東部の小学校を中心に32年間教員生活を送り、早期退職後は自宅で大人向けのパソコンなどの教室「かるちゃーステーション名張」を開校。一方で、「まだまだ子どもたちと関わりたい」という思いや現場からの求めもあり、現在は、やまぞえ小、山添中(いずれも山添村)、曽爾小中(曽爾村)の3校へそれぞれ週2、3回出勤している。

 ICT支援員は両村が雇用する非常勤職員だが、単に機器の操作を教えたり設定をしたりするだけが役割ではない。田中さんがICTを通じて子どもたちに伝えたいのは「生み出す楽しさを学び、見通しを持ってさまざまなことに挑戦し、人間関係を築いていくこと」の大切さだ。令和の時代、スマホやパソコンなどの機器が身近にあり、教わらなくてもアプリを自然に使いこなしていく子は少なくなく、逆に田中さんが教わる側に回ることもあるという。

積極的に試す児童

 やまぞえ小では昨年度、5年生を対象に「生み出す楽しさを感じ、集中力も向上する」というプログラミングを指導。今年度は全児童にタブレットが貸与され、5月には事前に撮影した写真・動画を材料に6年生が動画編集アプリを使って一人ひとり学校紹介ムービーを作成する授業があった。趣味で撮影している電車の写真や動画を交え、田中さんが場面の切り替え方や字幕の入れ方、著作権の考え方などを指導すると、児童たちは分からないことを教え合い、さまざまな応用ツールを積極的に試していた。

 姉に教えてもらい、普段から動画編集もしているという中西明日香さんは「表を奇麗に作ったり、動画を分かりやすく作ったり、教えてもらえることをいろんな場面で役立てたい」、初めて動画編集に挑戦した大矢花奈乃さんは「タブレットで長い動画を作ったり調べ物をしたり、もっと便利に使ってみたい」と話していた。

 同小の浅野典昭校長(55)は「学校現場とICT、どちらにも理解がある人材は決して多くない。ICT化が進んでも、活用範囲は教員個人のスキルに任されていた時期が長かったが、子どもたちの力を伸ばし、教員のスキルアップも進めるため、今後も助言を必要としている」と、頼もしげに授業を見つめていた。

2022年6月25日付822号4面から

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