【満開になったコチョウランを眺める松浦さん=伊賀市平野北谷で】

 三重県伊賀市平野北谷の松浦千津子さん(69)が育てるコチョウランが、10年以上続けて美しい花を咲かせた。栽培が難しいとされるが、自宅一室に並ぶ8鉢は、白、紫、黄色の花が満開に。今年は特に花付きが良く、大きいものは14センチの大輪となった。

松浦さんが育てるコチョウラン=同

 祝い事などで贈られる代表的な花として知られるコチョウランは、ラン科の多年草で、着生植物。東南アジア原産で、温暖な栽培環境を好む。漢字では「胡蝶蘭」と書き、羽を広げたチョウのように見えることから名付けられたとされる。

 松浦さんはもともと花が好きで、ヒマワリやダリア、バラなど自宅でさまざまな種類を育ててきた。母の日に長女から贈られたカーネーションの鉢植えも、花が終わった後も「枯らすまい」と毎年花を咲かせ続けた。

「次の年も」

 コチョウランを育て始めたのは、2010年に85歳の誕生日を迎えた母の栄巳子さんが、友人から鉢植えを贈られたのがきっかけだった。喜ぶ母を見て、「次の年も咲かせてあげたい」と栽培に挑戦した。

 素焼きの鉢に入れ、用土にミズゴケを使い、日当たりの良い南向きの窓に近い室内に置き、鉢の中が乾ききらないように適度に水をやり、せん定の後と芽が出たころに栄養剤を与えた。育てるのは初めてだったが、栽培環境がうまく適合したのか、再び花を咲かせることに成功した。

 コツをつかむと、弟が行きつけの飲食店などから「咲き終わったコチョウラン」を譲り受け、松浦さんのもとに持ってくるようになった。数を増やしながら毎年花開く様子に、栄巳子さんは「いつも奇麗に咲かしてくれるなあ」と大いに喜んだという。

天寿を全う

 栄巳子さんは、松浦さんの手厚い介護を経て、昨年末に95歳の天寿を全うした。年を越して3月中旬、コチョウランは栄巳子さんの最初の株に始まり、今年も次々に花開いた。松浦さんは「コチョウランは母を10年間も喜ばせ、私のことも癒やしてくれた。私が元気なうちは、これからも毎年咲かせ続けたい」と話した。

2022年6月25日付822号1、2面から

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