【プロジェクトを企画した(左から)今出さんと手組みひもを制作する福田正裕さん、山下博子さん】

「純粋に商品価値見て」

 「フラットな目で作品の質や、手仕事の素晴らしさを見てほしい」。そう話すのは、三重県伊賀市予野にある生活介護・就労継続支援B型施設「上野ひまわり作業所」の職員、今出敦史さん(38)だ。

 同施設では、前身の小規模作業所時代から30年以上にわたり、企業から発注を受けた手組みひも制作などを就労科目にしてきた。「個人差はあるが、作業歴30年の方もいて、皆さん丁寧で高品質なものづくりをしている」。

 しかし、福祉の現場ではあくまでも就労科目。組みひもに関しては、土産物としてドライブインや宿泊施設などへの出荷が主で、キーホルダーなどリーズナブルな商品として販売されているのが現状だ。

 「もちろん、これはこれで大切な仕事。だが、もっと個々の得意分野を生かして、やりがいを感じられる仕事にできないか、福祉施設の品でなく、純粋に手組みひもとしての商品価値を見てもらい販売できれば、個々の暮らしがもっと豊かになるのでは」と、従来の委託品とは区別したブランド「green life project(グリーン・ライフ・プロジェクト)」を5年前に立ち上げた。

 プロジェクトは組みひもの他に、創作活動、園芸の3つを柱として、自由に得意分野の制作活動をするもので、パッケージや商品構成、販路についても、新規開拓をしている。ブランドのロゴデザインは今出さん自らが手掛けた。

 「売れても売れなくても同じではなく、作り手として売れる喜びを感じてもらいたいし、本来の技術を発揮できる商品を作ってもらいたい。自分が制作した商品を手に取って笑顔になっているお客さまとの触れ合いの場も持ってほしい」

 商品パッケージ類は、手組みひもの繊細さが際立つよう白を基調としたシンプルなデザインで統一され、伊賀市内のギャラリーやイベントへの出店販売を中心にしている。商品構成はピアスやアクセサリー、マスクひもなど、実用的で普段使いできる品ぞろえだ。

 立ち上げから少しずつ準備をし、昨年からSNSなどを中心に情報を発信したところ、洗練感のあるパッケージと、繊細な手組みひものアクセサリーは「可愛い、欲しい」と地元の女性を中心に口コミが広がっている。「土産物でもなく、福祉施設の品でもなく、魅力的な伊賀の手組みひもグッズとして認知されることに力を入れている」と今出さんは話す。

 現在、同作業所で手組みひもを制作しているのは5人ほど。30年を筆頭に長い間、組みひもを作り続けてきた人たちがばかりだ。アクセサリーの金具の取り付けなども全て手作業。「伊賀地域で同プロジェクトの商品を目にする機会が増えるよう、いろんなイベントで出店販売したい。SNS、ホームページなども充実させていきたい」と今出さん。

 商品はイベント会場の他、同作業所での購入も可能。希望があればオーダー品も受け付けている。

 問い合わせは同作業所(0595・39・1133)まで。

2022年5月14日付819号15面から

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