【修復が完了した算額を眺める直井宮司=伊賀市上野東町で】

 「学問の神さま」として知られる菅原道真公をまつる三重県伊賀市上野東町の菅原神社(上野天神宮)に、江戸末期に地元の商人から奉納された「算額」(市指定文化財)がある。図形の円周や辺の長さなどを求める5種類の設問と解答が記され、2010年の火災で全焼した拝殿に掲げられていたため破損がひどかったが、今年3月末にようやく修復が完了し、改めて拝殿に掲示された。

 同神社によると、近くで古手屋を営み、高等数学にも熱を入れていた喰代屋庄右衛門という人物が1854(嘉永7)年に奉納したと伝わる算額で、本体はヒノキの一枚板、額にはケヤキを使っている。火災で焼失は免れたものの、一部が欠損するほど大きく割れ、彫られた文字や図形は崩れた壁土などで埋まり、装飾金具も劣化していた。

往時の風合いを

 修復作業は熟練した技術を持つ地元の人に依頼。詰まった土を取り出し、板や額のねじれを直し、紛失した箇所は別の木で埋めて字を彫り直した。文字部分には若竹色の岩絵の具で細く色を入れ、飾り金具は洗浄してたたき直して磨き、往時の風合いを保つことに努めた。

 4月25日の春季例祭では氏子らに修復完了を報告する予定で、直井清宮司は「算額は、学問の神をまつる当社にふさわしい『神宝』の一つなので、春祭りで披露できることになりほっとしている」と思いを語った。

 元は同じく拝殿にあり、十二支の図柄と各方位に「大坂」「大峯」「初瀬」などの主要地名が記された「絵とき十二支方位盤」も同じ火災で破損したまま修復が進んでいないが、直井宮司は「こうして火災で失ったものを少しずつ元に戻していくのも私たちの役目と思う」と話した。

2022年4月23日付818号2面から

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