【羊の世話をする田嶋さん=山添村伏拝で】

料理店主ら切望 雇用拡大にも期待

 羊と触れ合える観光牧場「めえめえ牧場」がある奈良県山添村では、特産の大和茶などを与えて飼育する「大和羊」の生産拡大やブランド化を目指す羊肉活用事業をスタートさせた。既に「入手できるならぜひ使いたい食材」と切望する料理店主らも多いといい、少子高齢化や過疎化に直面する地域の活力として期待が高まっている。

羊肉の魅力を語るテロワールの大西さん

 同村地域振興課によると、大型肉用種の「サフォーク」、めん羊の「コリデール」の2種類約70頭が放牧されている同牧場は、さまざまな体験イベントなどもあり、家族連れなど年間約1万人が訪れる人気スポットだ。村では「羊のいいとこ、全部伝えたい」をコンセプトとした「羊まるごとプロジェクト」に着手し、牧場の活性化、除草のために羊を貸し出す「草刈り隊派遣事業」と並び、新たな産業・雇用創出につなげる3本目の柱とするべく羊肉活用事業に取り組み始めた。

 飼料に大和茶を与えた羊は2020年に4頭、21年は2頭を出荷しているが、国産羊肉は流通量が少なく、生産体制や飼育方法などは手探り状態。当面の目標として「年間100頭の飼育」を掲げ、将来的には県内・国内のレストランなどに提供できる体制を。当面は少頭数でも安定的に生産できる体制を確立すべく、新たな放牧場の整備や人材募集を進めていく予定だ。

試食会で羊肉料理を提供 村長「生かし方教わった」

試食会で提供された羊肉料理の一例

 17年に「地域おこし協力隊」として着任し、3年間の任期を終えた現在も同牧場の牧場長を務める田嶋美穂さんは、以前から「人との関わりが深い家畜動物の大切さを伝えていきたい」という使命感を抱いてきた。観光地である牧場への滞在時間を延ばす工夫はもちろん、羊肉活用事業についても「不安はあるが、途切れずに無理の無い範囲で取り組んでいけたら」と話す。

 3月7日にはフォレストパーク神野山(伏拝)のレストラン「映山紅」でスタートアップセレモニーがあり、奈良県内の飲食店主らでつくるNPO法人「テロワール」のシェフたちが羊肉と山添産の野菜・果物をふんだんに盛り込んだコース料理を試作し、地元関係者らに振る舞った。

 試食会の後、同法人理事長の大西佳則さんは「国内でもまれな取り組みだと思うが、内外の人たちに『山添の羊はおいしい』と言ってもらえるよう、生産量を増やすことを考えてほしい」と要望し、野村栄作村長は「山添の羊や野菜のこと、その生かし方を教えて頂いた。10年後に『羊肉なら山添』と言われ、働く人たちが増えるよう取り組んでいきたい」と答えていた。

2022年3月26日付816号21面から

- Advertisement -