【愛車でレトロ銭湯「一乃湯」を訪れた中西さん(右)と西澤さん=伊賀市上野西日南町で】

荷台には「ボテ箱」 意気投合しツーリングも

 半世紀以上前に生産を終了した富士重工業(現・スバル)のオートバイ「ラビット」。三重県伊賀市緑ケ丘東町の団体職員、中西正敏さん(53)と同市佐那具町の会社員、西澤典之さん(36)は熱烈な愛好家だ。大切に維持しながら、ラビットに似合う古い町並みを巡っている。

 ラビットは富士重工業が1946年から68年にかけて製造していた、日本初のスクーター。軽快な走りと独特で愛らしい外観で、多くの人に親しまれてきた。

 中西さんは28歳の時にラビットの懐かしい雰囲気に引かれ、中古で購入。故障の多さから一度は手放してしまったが、やがて後悔の念を募らせて再び入手し、過去25年間で6台を乗り継いできた。現在の愛車は、3年前まで東京の喫茶店で展示されていた61年式のスカイブルーだ。

 一方の西澤さんは、元々バイクいじりが趣味で、ラビット2台を含む計15台を所有。ラビットは3年前にインターネットで知り、一目ぼれして購入した。最初に入手した64年式は極めて状態が悪かったが、自力で解体修理し、美しいワインレッド色に仕上げて街乗りに愛用している。

 ラビットは車体のほとんどが鉄で、プラスチック樹脂製ボディの現代のバイクと比べて重量がある。生産終了から54年が経過し、故障時には部品の入手が一苦労。燃料はガソリンとオイルを混ぜる必要があるため、給油時に手間がかかる。しかし2人は「質感やレトロなデザイン、小気味良いエンジン音など、多くの魅力がある」と口をそろえる。

 元々2人は面識がなかったが、インターネットを通じて知り合い、ラビットの話題で意気投合。休日に関宿(亀山市)など近場の古い町並みを目指し、ツーリングを楽しんでいる。荷台には昭和レトロな紙製の運搬用コンテナ「ボテ箱」を取り付けるのが2人のこだわりだ。

 中西さんは「年の離れた西澤さんとも親しくなり、出掛けた先では子どもから年配の方まで声を掛けられる。ラビットは出会いも広げてくれる」、西澤さんは「これからも大切に乗っていきたい。故障の心配もあるので遠出は避けがちだが、いずれは琵琶湖一周に出掛けたい」と語った。

2022年3月26日付816号3面から

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