三重県の伊賀市消防本部は3月28日、同市四十九町の県伊賀庁舎でAED(自動体外式除細動器)を使うなど迅速で的確な行動で人命救助した伊賀保健所の職員らに感謝状を贈った。
感謝状を受け取ったのは県税事務所と伊賀保健所の田中雄馬さん(30)、佐藤千裕さん(43)、麻田道典さん(60)の3人。消防によると、昨年11月18日午後4時ごろ、同庁舎1階にある伊賀県税事務所で50代の男性職員が意識を失って倒れる救急事案が発生。上司や同僚、2階にある保健所の職員が協力し、救急隊の到着前に救命措置をし、男性は後遺症もなく約1か月後に職場復帰した。
男性職員の異変に気付いたのは同事務所長の島谷道久さん(59)で、当時の状況を「隣の部屋からバタバタッという音が聞こえ、心配で駆け付けると、けいれんを起こして倒れていた。一人で作業中だった」と説明。119番通報や保健所職員に蘇生措置を要請するよう指示し、担架が出入りする導線の確保など救急搬送に備えたという。
保健所職員の3人は災害用として準備する血圧計や聴診器などが入ったリュックを持って駆け付け、救急隊が到着するまでの約12分間、胸骨圧迫や1階ホールにあるAEDを使うなどし、男性職員の命をつないだ。看護師として病院勤務の経験がある田中さんは「呼吸が止まりつつある状況で、胸骨圧迫を続けた」、佐藤さんは「初めての経験。AED(による電気ショック)の後、少し脈や呼吸が戻りホッとした」と当時を振り返った。
島谷さんによると、市内の病院に搬送された男性職員は約1週間後に意識が戻ったと家族から報告を受けたという。林浩己消防長は感謝状の贈呈後、「勇気ある行動が救命の連鎖につながり尊い人命を救って頂いた。ありがとうございます」と礼を述べた。
市内では昨年の救急出動件数が4380件、搬送数は3857人だった。林消防長は「市民の23人に1人が救急搬送されたことになり、そのうち92人が救命措置の甲斐なく亡くなっている」と状況を説明。消防本部が実施する救命講習の修了者は過去5年間で延べ7647人。県職員も数年に一度、講習を受けている。