【商品を紹介する(左から)上髙原さん、伊藤さん、多田さん=名張市安部田で】

「カミノイタズラ」

 「農業をやりたい」と大阪から三重県名張市安部田に移住して有機栽培米作りに励む上髙原由佳さん(39)。「カミノイタズラ」とネーミングされた米は収穫2年目で「甘くておいしい」と好評だ。

 祖父や父が畑を借りて野菜を作っていたが関心がなかった学生時代。20歳を過ぎて飲食店に就職し、仕事で農家の人から話を聞いたことで農業に関心を持つようになった。

トラクターの乗り方を学び、土地の耕しから始めた上髙原さん

 転機は35歳の時。病気で半年間休職したことが自身を見つめ直す機会となった。2、3か月近く思うように動けなかったのが食事療法などで回復したことから「農業をやりたい」との思いが強まったという。病気を乗り越えた時、友人が握ってくれた無農薬米だけのおにぎりのおいしさが忘れられず、「米作りをやろう」と決心した。

 復職後、仕事の休みを利用して岡山県にある農業塾で勉強。同じ仲間に名張市にゆかりのある人がいたことから、同市で米作りを始めることに。安部田で無農薬米作りに取り組んでいた伊藤伝一さん(91)にノウハウを学んだ。約7000平方メートルの土地を借り、2020年3月に退職し、翌4月に名張へ転居。トラクターの乗り方を学び、土地の耕しから始めた。

 雑草に悩まされ苦労の末、初めて収穫。おいしかったが納得できる仕上がりではなかったといい、栽培計画を立て、除草法を見直した昨年は1万平方メートルに拡大した田んぼで2回目の収穫。「自分で作った米です」と自信を持って言える合格点に達する米が出来上がったという。

 上髙原さんが作っている種類は「ヒノヒカリ」「キヌヒカリ」「ミエノユメ」ともち米。現在は、週末、大阪から手伝いに来て、主に広報を担う多田悦子さん(50)を相棒に収穫した米を「カミノイタズラ」ブランドとして発信、販売している。

 師弟関係の伊藤さんとは、時にはぶつかることもあるが、同じ思いなので信頼関係で結ばれているそう。今シーズンは、「数よりも質向上」を掲げ、収穫量を昨年の半分ほどにするという。上髙原さんは「その分、気になっている食品ロス問題に取り組む予定」と話した。

 また、3月13日午前10時から午後4時までは田んぼで種まきイベントを開催予定。詳細は「カミノイタズラ」のインスタグラムで発信している。

2022年3月12日付815号16面から

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