【板金情報紙「栄蔵板金あらかると」を手にする川口社長=名張市瀬古口で】

 三重県名張市瀬古口の建材卸販売「川口栄蔵株式会社」では、40年近くにわたって毎月、顧客に向けて板金情報紙「栄蔵板金あらかると」を送っている。売り手と買い手とをつなぐツールとして、活用し続けている。

 情報紙はA4サイズ1枚で、顧客に発送する請求書に同封している。同社が扱う商品の状況や原材料を巡る世界的な動向、メーカーから届く最新情報など、社長の川口佳秀さん(66)が仕入れたさまざまな情報の中から重要なポイントをまとめ、提供している。扱う素材に付着した新型コロナウイルスの感染力保持時間の紹介など、予備知識として役立つタイムリーな話題も取り入れている。

 川口さんは、社会人になってから鉄鋼の商社で働いていたが、1982年に父・清さんが経営する同社に移った。営業回りに精力的に励んだが、全ての顧客に会うことはどうしても難しいと感じた。そこで、実際に会えずともコミュニケーションを図ることのできる手段として、情報紙を送ることを発案した。

 83年6月の第1号からしばらくは、妻の広子さんが手書きで作成。広子さんは「私たちが結婚してからたった2か月後、突然、『お前、書け』って言われてびっくりした。文字列がゆがまないように頑張った」と当時を振り返る。

 情報紙は川口さんが社長になってからも続き、昨年12月には375号に達した。現在は川口さんの指示の下、事務員が活字化して作成している。

1983年6月発行の第1号の板金情報紙

 川口さんは「『もっと詳しく教えてもらいたい』といった連絡が各顧客から来るようになり、中にはファイリングして頂いている人もいる。毎月の情報発信はうちならではの取り組みだが、こんな細かいことは次の代はようせんかもな」と笑顔で語った。

2022年1月15日付811号6面から

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