【名張駅のホームで「近鉄カレー(名張編)」を手にする福本さん=名張市平尾で】

 近畿日本鉄道(本社・大阪市天王寺区)は、名張列車区(三重県名張市)の社員食堂で長年親しまれてきたカレーを再現したレトルト食品「近鉄カレー(名張編)」を発売した。2月14日からは、インターネット通販が始まった。

 同社の列車区社員食堂は現在、名張、高安(大阪府八尾市)、新田辺(京都府京田辺市)の計3か所があり、名張駅に隣接する名張列車区の社員食堂は1968年に営業を開始。名張市内に住む山口進さん(82)が委託を受け53年間にわたって朝、昼、晩と食事を提供し続けている。一般利用はできず、利用するのは列車区所属の運転士や車掌ら約200人が中心。さまざまなメニューがある中、原則月曜日に提供され、ジャガイモやニンジン、タマネギ、牛肉などが入る定番のカレーが一番人気となっている。

 昨年の春、業務で本社から名張列車区を訪れた運輸部営業課長補佐の福本章さん(53)は、山口さんが作るカレーを食べ、評判通り「何度食べても飽きないような、家庭的で素朴なおいしさ」に心を打たれた。「ぜひ多くの人に、社員食堂で人気のカレーを味わってほしい」と、レトルトでの商品化を社内で提案した。

 山口さんは最初のうちは商品化の話に驚いていた様子だったそうだが、食品会社からのヒアリングに応じるなど味の再現に協力。約半年を経て、「近鉄カレー(名張編)」が完成した。発売日は、山口さんが食堂を始めたのと同じ年に制定された「レトルトカレーの日」にちなみ2月12日に。大阪上本町駅では発売から2日間限定で販売会が開かれ、当初用意した数を上回る750個が飛ぶように売れたという。

 14日からはインターネットストア「近鉄グッズ販売部」(https://blog2.kintetsu.co.jp/goods/)での販売も開始し、価格は1箱700円(送料別途)。同社広報部によるとネット以外での販売も検討中で、近鉄カレーについては「今後、シリーズ化もできれば」としている。

 今回、自身のカレーがレトルトで再現されたことに「うれしさ半分、恥ずかしさ半分」と山口さん。「暑い日も寒い日も頑張る乗務員に温かい食事を提供したい一心で続けていて、『ありがとう』の一言が励みとなっている」と日々の仕事への思いをコメントした。

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