【水道管の漏水現場で進む復旧作業=名張市東田原で昨年12月7日午後8時31分撮影】

 昨年10月に和歌山市で水道橋が崩落して大規模な断水が発生し、水道管の老朽化が全国的に注目された。三重県名張市でも、比較的影響の大きな水道管の事故がここ数か月で相次いでいる。

 事故を振り返ると、11月26日には新町で管の更新中に破損事故があった他、12月7日には東田原、1月11日にはつつじが丘、14日には蔵持町里で水道管の老朽化による漏水事故があり、濁水や断水が発生するケースもあった。

 同市の水道事業は1964年に着手し、65年に一部から給水を開始。これまでに敷設された水道管の総延長は2020年度末で668・46キロに及ぶ。敷設から法定耐用年数の40年を超える水道管の割合「管路経年化率」は29・67%で、県平均よりも高い。

 管路総延長に対する更新の割合を示す「管路更新率」は1・25%。これは同市の全ての管を更新し終わるのに90年以上かかるペースであることを示す。管路経年化率は10年前の11年度末時点が11・73%で、約18ポイントの上昇。現在のペースで整備が進んだ場合、10年後には約50%まで上昇する見込みだという。

 老朽化すると漏水事故などのリスクが高まるため、自治体は計画的に管路を更新していく必要があるが、財政事情などから遅れることもあり、余裕がない同市もこれに当てはまる。50年以上経過した管から優先的に更新を進めているが、追いついていない状況だ。

 敷設場所の環境などで、法定耐用年数の40年を超えても異常なく使用できる場合も多いが、同市は70年代以降の大規模住宅地開発で人口が急増したため、それに伴い整備された水道施設が近く一斉に更新対象となる時期が到来する。

 市水道工務室の岩本嘉浩室長は「今までは大きな管の漏水はあまりなかったが、今回続いたことで危機感を持っている。しかし、急に大きな予算がつくわけではなく、先を見据えて工事を平準化し、計画に基づいて整備を進めていくのが大事と考えている」と話した。

2022年1月29日付812号23面から

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