【メニューを紹介する田中さん=名張市中町、10月下旬撮影】

「創業塾」で学び 名張の田中さん

 「関西の迎賓館」として1909(明治42)年に開業した「奈良ホテル」(奈良市)の日本料理長を務めた三重県名張市百合が丘東7の田中孝昌さん(60)。定年退職した今春、資金計画やマーケティングなどを学ぶ同市主催の「創業塾」を受講し、11月初旬に同市中町で日本料理店「花いかだ」を開業した。「料理人ひと筋で来たので、経営のことは一からの勉強だった。期待と不安でどきどきしている」と心境を語る。

 28年前、奈良市から転居した田中さんは、昔の趣きが残る旧市街地で自分の店を持つのが夢だったという。今回開業した日本料理店は市街地を流れる簗瀬水路(城下川)に接する理想の地。知人の紹介で下見に訪れた時、たまたま小さな花いかだが浮かんでいたといい、「梅雨時、ハナショウブをいかだに乗せて川に浮かべる伝統行事があることを、その時に初めて知った。『花いかだ』という言葉もすごく気に入った」と田中さん。この伝統行事を主催している市民団体「川の会・名張」に相談し、店名を「花いかだ」に決めた。

 田中さんは奈良県内の高校を卒業してすぐ、奈良市内の和洋レストランや料理旅館で約10年間、日本料理を修業した。27歳の時、同市の新公会堂にテナントで出店した奈良ホテルの「レストラン能」の調理人に応募、日本料理担当で採用された。

 37歳の時、同ホテル内に初めてできた日本料理店「花菊」の料理長に抜擢(ばってき)され、定年まで調理人として腕を振るってきた。「僕自身を育ててくれた奈良ホテルには感謝しかない」と話し、印象に残っているエピソードとして、「現在の天皇陛下がご結婚の折、参拝された橿原神宮において日本料理でおもてなしする機会があった。料理人としては光栄の極みで、緊張の連続だった」と振り返る。

 「日本料理の神髄は素材を生かしきること」と話す田中さん。昼のメニューは3品で、隣接する豆腐店から仕入れた豆腐を使った田楽、その日の朝に仕入れる新鮮な野菜や魚の伝法焼き、伊賀黒毛和牛のローストビーフなどを提供する。夕食は完全予約制で、会席と一品料理、地酒も楽しめるそうだ。

 田中さんは「お客さまに喜んで頂くことを第一に、地元の素材とインスタ映えする盛り付けでもてなしたい。出店が地域の活性化に結びつくよう努力したい」と抱負を語った。

 問い合わせは同店(0595・42・8507)まで。

2021年11月20日付808号20面から