【(左写真)自宅の作業場で竹を加工する倉坂さん(右写真)竹細工作品=名張市赤目町相楽で】

 つややかに、しなやかに、阿波踊りを踊る女性。編み笠や浴衣、げたなど、全てが手作りの竹細工だ。「浴衣の裾から足先がちらっと見えるところも工夫しました」と話す、三重県名張市赤目町相楽の倉坂学さん(64)は今年3月に竹細工を始めたばかりだ。

 きっかけは、地元で発足した「赤目竹あかりSDGsプロジェクト」の一員になったこと。竹林の整備作業にも参加し、竹の伐採で生じる細竹や枝の端材を「何かに使えないか」と考えた。竹細工の民芸品などをインターネットで見て、「素人だが、挑戦してみよう」と思ったという。

 最初に作ったのは、やじろべえとカマキリなどの昆虫だった。作品の写真を同プロジェクトのメンバーに見せたところ「これは素人の域を超えた、たくみの技だ」と言われたそうで、「このおだてに乗ってしまった」と笑う。

 これを機に、プロジェクトのメンバーからも大きな期待を寄せられるようになり、やりがいを感じながら本格的に竹細工に取り組み始めた。

 「粘土細工など、元々手作りするのが好きなので楽しい」と話す倉坂さん。勤務する市内の職場から帰ると、駐車場裏にある作業場で夕食までの約1時間、気が向けば夕食後も2時間ほど没頭する。これまでに昆虫の他、動物や人力車、ドジョウすくいをする人など20作品ほど作った。

 中には蒸気機関車の「D51」や、奈良の室生寺五重塔などの力作も。「五重塔の屋根は複数の竹を合わせるが、それぞれ反り具合が違うので、屋根の端を合わせるのに苦労した。でも、まだまだ未完成」。

 使う道具は、のこぎり、小刀、なた、ドリルの他、焦げ目を付けたり曲げたりするためのバーナー、接着剤、ニスなど。「竹は木と違って弾力があり、細かいところまで細工できる。仏像や城、クラシックカーなどにも挑戦したい。赤目滝に生息するサンショウウオも作ってほしいと言われているが、曲線が多くて難しそう」と笑う。

 「私の作った作品が、近鉄赤目口駅前の『旅のステーション』などに並び、観光客に喜んでもらい、地元の活性化に貢献できればうれしい」と話した。

2021年10月9日付805号2面から

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