【能面の撮影を進める藤木さん(右)と中森宮司=名張市平尾で】

 三重県名張市平尾の宇流冨志禰神社で10月7日、所蔵する県指定有形文化財(彫刻)の能・狂言面45点を高画質カメラで撮影し、デジタルデータとして保存する取り組みが始まった。

能面を撮影する藤木さん=同

 同神社の能・狂言面は、江戸時代に名張を治めた名張藤堂家が明治維新後の廃藩置県で東京に移る際、一括で寄進したもの。能面が31点、狂言面が14点あり、制作年代は室町中期から江戸期とされる。かつては神社の蔵の中のたんすに収められていたが、現在は社務所内の一室で「伊賀まちかど博物館」として常時展示(要予約)されている。

 今回の取り組みは、2019年に同市瀬古口から元町に移り住み、飲食店「京風イタリアンらんぽ」(現在休業中)を開店した藤木泰之さん(50)が提案。藤木さんは20年近く動画制作も手掛けており、地区の氏神である同神社への奉仕の一環として申し出た。

能面「朝倉尉」=同

 この日は、全国に3点しかないとされる越前和泉掾作の貴重な能面「朝倉尉」(桃山時代)など13点の撮影を終えた。撮影では、中森孝榮宮司(71)の他、藤木さんが所属する旧町のまちづくりグループ「SWITCH(スイッチ)なばり」のメンバーも協力し、面の表裏とも一つひとつくまなく収録した。全ての面を撮影した後は、藤木さんが11月半ばまでに面の紹介動画として編集する予定で、完成後は参拝者がモニターなどで閲覧できるようにするという。

 藤木さんは「間近で撮影すると、作者が手作業で力強く彫る様まで感じることができた。デジタル化することで、現在のこの姿を後世にも鮮明に残すことができる」と話し、中森宮司は「面のことを、今までより広く知って頂けるようになる。とてもうれしいこと」と話していた。