【サトイモの花をのぞき込む猪飼さん=伊賀市治田で】

 「十数年ぶりに咲いたと思ったら、まさか3年も続けてとは」。奈良市月ヶ瀬尾山の猪飼康紘さん(77)が三重県伊賀市治田にある畑で栽培しているサトイモが、3年続けて開花した。熱帯地方原産で、高温多湿などの条件が整った時にしか花が咲かないとされているが、珍しい出来事に驚きを隠せない。

 2001年に大阪から転居した猪飼さんは、自宅から程近い場所で畑を耕し、普段の食卓や、夫婦で営む民泊の食事に供する野菜を育てている。サトイモは転居の数年後に一度開花した以降は咲かなかったが、2019、20年と続けて5株開花し、昨年咲いた株の種芋のうち2株が今年開花した。

 よく育てば大人の顔よりも大きくなる葉の茎とは別に、株の中央付近から40、50㌢ほどの長さの茎が伸び、丸まっていた先端が黄色いミズバショウのように開く。今年開花した5株のうち2株は、昨年咲いた株から採れた芋を植えたものだ。

 「雨が多く、サトイモ自体の出来は良い」という猪飼さんは「私に農業を教えてくれた人からは『田畑は花咲くキャンバス。美しく仕上げなあかん』と教わった。どんな作物も、ちゃんと手をかけて育てれば花が咲く、ということなのかな」と不思議そうに花をのぞき込んでいた。

2021年9月25日付804号14から

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