【琉莉ちゃんを抱き優しく見つめる松村さん(左)と福田さん=名張市さつき台で】

「不安和らぐ」「力強い存在」

 6月25日に第一子の長女を出産した、三重県伊賀市生琉里の福田直紀さん(26)。孫の誕生に立ち合い、取り上げたのは、実母で名張市さつき台1の助産師、松村直美さん(58)だ。感動の出産で生まれた赤ちゃんは、福田さんの夫・隼士さんが「琉莉」と名付け、すくすく育っている。

 自身が子どもを産み育てる中、「成長していく姿が感動だらけだった」という松村さん。そんな「すごい子ども」が誕生する瞬間に「立ち合い、関われたら」と助産師の道に進み25年余り。宇陀市内の病院を経て、現在は伊賀市内の医療機関の産婦人科に勤務する。

 助産師の仕事は予測できない事態もあり、「感動している間もないのが現実」だというが、「大変だけどうれしい仕事」で、やりがいも感じ、「誕生の場に一緒にいるのは尊い」という。そんな母の背中を見て育った福田さんは、以前から「お母ちゃんの勤務する病院で産もう」と思っていたそうだ。

 福田さんの妊娠が分かったのは昨年秋。つわりは軽かったが、32週に入った今年5月の検診で切迫早産が判明。母の勤務先に入院した。コロナ禍で面会は限られたが、母とは毎日病室で会話でき、不安も和らいだ。働く姿を初めて目の当たりにし、「他の妊婦さんの力強い存在となっているのが誇らしく、格好良かった」と振り返る。

 36週に入り、一旦退院。実家に戻った2日後に破水し、母の勤務先へ向かった。その日の午後11時、顔をしかめるほどの陣痛がきた。痛さをこらえ、「母が笑って会話してくれたのでリラックスできた」。翌25日午前4時前、最大の痛みが襲う。分娩室に入るや否や、優しい母が一変、助産師の表情になった。内診でも「痛い」とうなる福田さんに「これくらい辛抱しぃ」と容赦なかったそうだ。

 午前4時21分、2614グラムの赤ちゃんが誕生。うれしさ半分、不安半分な中、元気な産声を上げた我が子と対面した。現在の琉莉ちゃんは、よく眠り、よく飲み、体重の増加も良いという。

子育て楽しんで

 松村さんは「切迫早産のころから世話をかけ、心配してもらっていた先生、病院スタッフや周りの人に感謝し、これからが大変な子育てを楽しんでほしい」と話す。

 「助産師は感謝される仕事で、母に向いている」ことを実感したという福田さんは「周りへの感謝の気持ちを持ちつつ、自分の個性も大事にしてほしい」と琉莉ちゃんに目を細め、「これからもよろしくね」とほほ笑んだ。

2021年9月11日付803号20面から

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