【咲き始めたハスの花やつぼみを見つめる森川さん=伊賀市上野農人町で】

 あなたの月命日に、今年も花が咲いたよ―。三重県伊賀市上野農人町の森川眞知子さん(67)が自宅の庭で十数年育てているハスが、6月下旬から1輪ずつ開花している。偶然か必然か、20歳で他界した長男の月命日に当たる6月26日には毎年花が開き、黄、白、ピンクの3色が盆ごろまで順に咲いていく。

「供養に」から「笑えるように」

 20年前、長男は交通事故で突然帰らぬ人となった。「病気で苦しんでいる人たちを救いたい。医師になる」という目標を描いていた息子を亡くし、森川さん家族は「しばらく何も手につかなかった」という。

 事故から数年が経ったころ、森川さんは現在も支えてくれている長男の友人の母親に誘われ、ハスを育てている人のもとを訪ね、切り花をもらった。仏教には「蓮の台」という言葉がある。極楽浄土に往生した者が座るとされるハスの台座のことだ。森川さんは「息子の供養になれば」と、ハスを育ててみることにした。

 現在、森川さん方の庭には大きな鉢が20ほど並び、毎年の植え替えは重労働だが、「ずっと花を咲かせ続けてほしい」と願う。今年2月、92歳の母が他界したのは、偶然にも亡き長男の誕生日(17日)だった。「どれだけ経っても悲しみが消えることはないけれど、花が咲いたり、ちょっとしたうれしいことがあったりすれば、癒やされる気がする」とつぶやく。

 長男を亡くしてからずっと抱えてきたさまざまな思いが整理され、いつの間にか笑えるようになっていたという森川さんは「周りの人たちに元気付けてもらい、自分や家族が前向きになってこられたことに感謝している。今度は自分が苦しんでいる誰かに手を差し伸べることもできるのでは」と、今年も咲き始めたハスの花に、長男と母の姿を重ねていた。

2021年7月10日付799号1面から