【自宅前にそろった杉本さん一家=名張市赤目町柏原で】

空き家改修し移住 念願の店も

 「人と人との距離が近く、助け合える仲になれるのが最高」。昨年末、大阪府枚方市から三重県名張市赤目町柏原に移住した、しんきゅう師の杉本陽佑さん(41)。妻の美和子さん(37)、長女の侑和ちゃん(5)、長男の陽仁ちゃん(3)との4人家族で、木造平屋の空き家を自分たちの手で改修し、新生活を楽しんでいる。

改修工事中の古民家=同

 夫妻ともに「自然が好きで、古い物を見ると“ざわつく”」仲。3年ほど前から「古民家に住みたい」と、関西を中心に物件探しを始めた。杉本さんは「広さがあって、学校や駅が近いこと」、美和子さんは「家にときめくかどうか」がポイントだったという。

 「1か月に1件は実際に見に行く」と決め、20件近く探したものの、理想の物件はなかなか見つからなかった。半ば諦めかけていた昨年6月、美和子さんがインターネットで見つけたのが、名張にある古民家だった。期待せず現地を訪問したところ、「保育園や駅も近く、車が少ない。子どもたちをのびのび遊ばせられる中庭もある。おまけに、はりや柱、建具も古いまま」と、2人の条件に当てはまり、移住を決意したという。

 同月の下旬には、業者に依頼した雨漏り工事が開始。その後、「内部の改修は自分たちの手で」と、初めてハンマーを手にした。最初は土壁などを壊すのが快感だったというが、作業の過酷さに気分も次第にトーンダウン。喜んで手伝ってくれていた友人たちも作業終盤には無言になり、「『また来る』とは言ってくれなかった」と笑う。

改修を終えた屋内=同

毎週大阪から作業に 「集まれる場所提供したい」

 それでも2人で毎週大阪から名張へ足を運び、地道な作業を続けた。工務店からアドバイスをもらい、天井を抜いたり、畳を取り外して板間にしたりと、汗を流した。近所の人たちも、木の伐採などを助けてくれたそうだ。なかでも杉本さんは「天井の板貼りに苦労した」、美和子さんは「すすで真っ黒になりながらも壊した土壁を土嚢に詰めて運ぶ作業がつらかった」と振り返る。

 「まだ工事中で、完全には仕上がってはいない」そうだが、知識も無かった状態から、ほぼ自分たちで造り上げた新しい住居に、愛着もひとしお。2月末には「飲食店を開きたかった」という美和子さん念願の、スパイスカレーの店をオープン。杉本さんの仕事場も完成し、新たな生活をスタートさせている。

 夫妻は「もう少し出来上がってきたら、子育てママたちを中心にイベントなどで集まれる場所を提供したい」と、家族の夢を広げている。

2021年6月26日付798号2面から