【焼き上がったシフォンケーキを手にする岡村さん=名張市西田原で】

試行錯誤し酒米で

 「オーブンの前で膨らんでいくのを見ているのが好き」。三重県名張市西田原の岡村章子さん(59)が、米粉を使ったシフォンケーキ作りを「第二の人生」にしようと歩み始めた。

 2年前、立ち寄った「道の駅」で、高齢の男性が販売するわらびもちに行列ができているのを見かけた。「年をとってからも、自分で何かやっていける仕事ができたらいいな」と思っていた岡村さんは目が釘付けになったという。「勤続23年。定年後に何かを始めたら、体力、気力ともに遅いのでは」と考え、それまで勤めていた会社を思い切って退職した。

 元々、手作りが好きで、中でもパン作りを本格的にしようと、天然酵母から仕込むパン作りに取り掛かった。ところが、小麦粉アレルギーを発症。一時的な症状だったものの、「グルテンフリーなら米粉がある」と友人に勧められ、米粉を使ったパン作りを始め、教室にも通った。その後「1つのものに特化したい」と、米粉のシフォンケーキ作りを教えている岡山県内の教室まで泊まり掛けで習いに行った。

 同時期に大阪の米粉菓子教室へも通い、インストラクターの資格を取得。粘りの少ない酒米「山田錦」の米粉を使った作り方も学び、今年に入ってから、夜に毎日2、3個ずつ作り続けた。なかなか納得のいくものはできなかったが、「酒米シフォンをどうしても作りたい」と試行錯誤し、「口の中に広がる、とろける感じ」の理想のケーキに仕上がった。近所の人や友人に試食してもらったところ「おいしい」「疲れた体が癒やされた」など、うれしい反響があったという。

 地元の野菜や果物などを使って地産地消にも一役買いたいという思いもあり、キウイや緑茶、ホウレンソウなどのケーキ作りにも挑戦した。今後も甘夏やブドウのピオーネなど季節に応じた食材を使いたいそうだ。

 今春、自宅の一部を工房としてリノベーションした。近い将来は、そこで販売や教室も開きたいという岡村さんは「これからの人生は自分のために」と目を輝かせた。

2021年6月12日付797号2面から