【昨年11月の新嘗祭で演奏した的塲さん(右)と榎さん(提供写真)】

「人のために音楽」笙奏者に 舞姫務めた地元・木代神社で

 神社の祭祀で欠かせない雅楽を奉納する「伶人」。伊賀市蓮池の木代神社では、市立緑ヶ丘中学2年で同市高山の的塲咲希さん(14)が管楽器の笙を演奏する伶人の役割を継承した。次の出番は2月18日(木)の祈年祭。地区の伝統をつなぐ若者の姿に、住民らが期待を寄せている。

稽古に励む的塲さん=伊賀市蓮池で

 高山、喰代、蓮池の3地区から成る木代郷の総社として崇敬を集める同神社。氏子は現在約120戸で年々減少しており、少子高齢化も進む。神事では、氏子で笙歴約50年の同市喰代の上野教男さん(71)と、隣地区の友生神社(下友生)の氏子で龍笛担当の榎正和さん(67)の2人が年4回の雅楽演奏を担ってきたが、昨年4月の例大祭で上野さんが「若い人に譲りたい」と退任を申し出た。

 4歳からピアノを習う的塲さんは、家が木代神社の氏子で、小学2年から6年間は舞姫を務め、中学では吹奏楽部でトランペットを担当。上野さんの退任を受け、同神社の廣岡靖晃宮司(45)は的塲さんに「新しい楽器に挑戦してみないか」と声を掛けた。

 的塲さんは「音楽が好きなので、やってみたい」と快諾。廣岡宮司は、友生神社宮司で雅楽グループ代表を務める溝脇操さん(72)に指導を依頼し、溝脇さんの妻で笙奏者ののりえさんが、5月から月2回のペースで個人レッスンを始めた。

 西洋音楽の楽譜とは異なり、雅楽の譜面は特殊な文字記号が並ぶ。おまけに笙は呼気で結露しやすく、そばに置いた電熱器で温めながら演奏する必要があり、扱いが難しい。昨夏はコロナ禍で部のコンクールが中止になり悔しい思いをした一方、笙の習得にも励む的塲さんは、西洋と日本の音楽のつながりや雅楽にしかない音の存在、曲を支える伴奏楽器の重要性などについて考える機会になったと振り返る。幼少から音感を鍛えてきたためのみ込みが早く、のりえさんは「この歳で1年足らずで覚えてしまった」と驚く。

 伶人としてのデビューは昨年11月の新嘗祭だった。53歳離れたパートナーの榎さんが吹く龍笛の主旋律にも合わせることができ、10月の秋祭りで事前練習を見ていた上野さんも「音の出し方がうまく、筋が良い」と評価した。2回目の出番に備える的塲さんは「人のために音楽ができるのがうれしい。挑戦する機会をもらえた笙をもっと練習し、出来る限り続けたい」と語った。

社務所での笙の稽古中、笑顔を見せる的塲さん=同
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