名古屋から伊勢までの計106・8キロ・8区間で競う11月1日の「全日本大学駅伝対校選手権大会」に東海地区代表として出場する皇學館大(伊勢市)駅伝部の中心選手、名張市つつじが丘出身の川瀬翔矢さん(22)は、ハーフマラソンの現役日本人大学生1位(1時間1分18秒)の自己記録を持つ。少年時代にサッカーで培った持久力を土台に、心も体も成長した3年半を経て、地元で開かれる学生最後の大舞台で世界や未来につながる走りを見せる。【チームメートとともに2000メートル走で汗を流す川瀬さん(右端)=伊勢市神田久志本町の皇學館大で】

成長見せる「世界で勝負を」

 小中9年間はサッカーに熱中し、中3の時に参加した「美し国市町対抗駅伝」の予選会での走りを見た、当時近大高専(名張市春日丘)の駅伝部監督を務めていた植田良二事務長(61)から誘いを受け、本格的に陸上競技を始めた。在学中はインターハイには届かなかったものの、3年時の県総体では1500メートルで4位(4分1秒20)と、着実に成長してきた。

 「全国の舞台で戦いたい」と意気込んで入学した大学では早速、1年時に5000メートルで13分台を記録し、学校として初出場した全日本駅伝でも1区で上位陣に食らいついた。腰の負傷もあった2年時は、記録にこだわらず体づくりに重点を置き、「食事や体のメンテナンスにも気を遣うようになり、ステップアップできたと思う」と振り返る新鮮な1年間だった。

 3年秋は5000、1万メートルともに東海学生記録を約40年ぶりに塗り替え、4年生となった今年9月の日本インカレの5000メートルでは自己ベストに迫る記録で2位入賞。チーム副主将として精神面も成長し、全日本駅伝の予選直前の朝練習では「丁寧に、思い切っていこう」と声を掛け、4年連続出場を後押しした。

地方大学から

 関東の強豪校に進む同世代のライバルも多いなか、川瀬さんは地元の大学を選んだ。同高専1年時からその素質に注目していたという日比勝俊監督(55)は「地方大学の限られた環境でこれだけ成長してこられたのは特筆すべきこと。学校として可能な限りのサポートをし、先々は五輪や世界陸上などで活躍してほしい」と期待を込める。

 「区間賞が目標」という自身3回目の大舞台を控えた川瀬さんは今、走る楽しさや充実感を全身で感じているという。大学での活躍は「急成長」と捉えられることもあるが、日比監督は「彼自身が将来のビジョンを描いてきたからこそ」と冷静に分析する。

 「世界で勝負できる選手になる」―。その信念を胸に、一緒に汗を流してきたチームメートとたすきをつなぎ、伊勢路を駆け抜ける。

2020年10月24日付782号2面から

- Advertisement -