大海を泳ぐイルカや鯨に魅せられた名張市朝日町の海洋ツアーガイド、川端真珠花さん(23)。魅力を多くの人に伝えようと、コロナ禍の先の未来に臨む。【御蔵島の海中でミナミハンドウイルカと泳ぐ川端さん(本人提供)】

川端真珠花さん=名張市で

「イルカと泳ぐ」

 大阪府出身。瀬戸内海の島に父方の実家があり、物心つくころには海が大好きになっていた。小学2年の家族旅行で飼育下のハンドウイルカと触れ合い、「哺乳類なのにどうして海の中に住めるの」と好奇心がかき立てられた。6年の卒業文集では「将来の夢はイルカと一緒に海で泳ぐこと」とつづった。

 中学3年の時、初めて野生のイルカを観察した。遮るものの無い広い海を自由に泳ぐ姿に心を奪われ、水族館の飼育員ではなく海のイルカを案内するツアーガイドを目指そうと決心。高校時代はアルバイトで資金を貯め、3年の時に単身、パラオとハワイに渡り、それぞれ1か月間、イルカとの接し方やガイドの基礎などを学んだ。

 高校卒業後は、海洋ジャーナリストで業界の第一人者、斎野重夫さんに師事。沖縄に随行した時には、全長約14メートルのザトウクジラに遭遇した。泳いでいた場所の真下に現れ、突如として浮上を開始し、好奇心も死への恐怖に変わったが、鯨は衝突を自ら回避して水面から頭を出した。大きく澄んだ瞳で「見つめられた」という。輝く泡とともに深海に帰る姿に「宇宙のような神秘」を感じたと振り返る。

川端さんがブラジル・アマゾン川の水中で撮影したアマゾンカワイルカ(同)

 「動物のことを第一に考えなさい」と語る斎野さんから学ぶ日々は新鮮な発見の連続で、旅費を稼ぐためのアルバイトも寝食を忘れて励んだ。タイやメキシコの他、アマゾンカワイルカを求めて遠くブラジルの土も踏み、ピラニアなど危険な生き物が生息する濁ったアマゾン川にも果敢に飛び込んだ。

 各国で積んだ経験を基に、22歳で初めて自らツアーを企画。野生のイルカが観察できる伊豆諸島の御蔵島(東京都)に、十数人を案内した。参加者からは「幸せな時間だった」「最高の感動体験だった」といった声が飛び交った。

 4回目の開催が迫った今年2月、新型コロナウイルス感染拡大を受け、ツアーの中止を決めた。同島は人口約300人で医療体制が乏しく、島側からも入島を自粛するよう要請があったという。

川端さんがメキシコで撮影したコククジラのジャンプ(同)

コロナ禍の先の未来

 20歳の時に堤防から転落し右足首に大けがを負ったが、それでも4か月後には泳ぐことができた。今は「イルカと一緒に海で泳ぐこと」が当たり前ではなくなった。コロナの猛威を前に落胆した日々もあったが、イルカや鯨の姿を思い描くうち、「潮の満ち引きのように、悪い時も良い時もある」と次第に前向きな気持ちを取り戻すことができたという。

 春から夏にかけては、専門書を開いて鯨類の勉強をやり直し、グッズ販売のためのネットショップも開設。名張市には3月に移住し、地元の社会人バスケットボールチームでカメラマンを務めながら撮影技術を磨いている。

 国際捕鯨委員会のまとめによると、世界では89種類の鯨類が確認されている。川端さんはこれまでに31種類と出会ったといい「コロナが落ち着いたら、アメリカのモントレーや北極海など、行きたいところがたくさんある。まだ見ぬイルカや鯨に出会って勉強し、魅力を多くの人に伝え続けたい」と笑顔で語った。

2020年10月24日付782号1面から