抽象画家 百上奈歩さん

 伊賀市長田出身の抽象画家、百上奈歩さん(31)(神戸市在住)の、地元で初めてとなる個展「青い夜」が、10月17日から25日まで伊賀市内で開かれる。「生」と「死」という、目には見えないが、人間が内包する強い力を想起させる作品の数々は、醜さも含んだ人間の「美しさ」を体現している。【細断した布をつなぎ合わせた制作中の出展作品を紹介する百上さん(本人提供)】

 漫画の主人公や身近な物を描き、「褒められるのがうれしかった」という幼少時代を経て、名張桔梗丘高の美術部で油絵を描き始めた。大阪芸術大では3年時から抽象画を専攻し、担当教授からは、自身の作品や世界観を自分の言葉で表す大切さも学んだ他、初個展を在学中に経験した。

 大学卒業後はアパレル業界で働き始めたが、これまで生活の一部だった絵と向き合う時間も、気持ちの余裕も無くなってしまった。1年弱が経ったころ、「伊賀へ戻り、無理せず絵と向き合おう」と心機一転。以前から心に決めていた「20代のうちに、絵を描くための土台を作る」という目標を見据えて制作に取り組み、結婚を機に神戸へ移った。

誰かの人生に共鳴できたら

 これまでに大阪、神戸で計4回の個展を開いてきたが、自身にとって個展の場は「生と死に向き合う場」だという。ある時、自分の作品を見て涙を流す人に出会った。「その人の人生に共鳴できることがあったのかも。少しでも立ち止まってもらえたらうれしい」。そんな経験も糧になっているそうだ。

 今回の題名は、いつもより明るく幻想的な、人々にとって特別な「祭りの夜」をイメージした言葉。期間中に開催される「上野天神祭」の鬼行列やだんじりの巡行が今年は行われないのを残念に思っているが、「ぜひ会場へのぞきに来て」と来場を呼び掛けている。

 個展は同市上野福居町のギャラリー「アートスペースいが」で、午前11時から午後6時(最終日は同4時)まで。入場無料。大小20点前後の出展を予定している。

 問い合わせは同ギャラリー(0595・22・0522)まで。

2020年10月10日付781号2面から

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