新型コロナウイルス感染拡大により伝染病の流行を防ぐ予言をしたとして話題になった妖怪「アマビエ」に続き、注目を集めているのが「ヨゲンノトリ」。伊賀市上友田で工房を営む陶芸家の濵田光紀さん(49)、尚子さん(40)夫妻が厄病退散の思いを込めて作陶した手のひらサイズの置物が人気を呼んでいる。【ヨゲンノトリの置物を制作した濵田さん(左)と尚子さん=伊賀市上友田で】

 ヨゲンノトリは山梨県立博物館(山梨県笛吹市)所蔵の江戸末期の資料に登場する、黒と白の2つの頭を持つ不思議な鳥。疫病流行を予言し、その姿を信心すれば難を逃れることができると話したとされる。同館がインターネットで紹介したところ、話題になった。

コロナ収束願い

 友人から2人に制作依頼があったのは5月中旬。それまで鳥をモチーフにした作品を数多く手掛けてきた濵田さんは、すぐに資料を確認して制作に取り掛かった。「形は僕、目入れや羽根の掻き落としは妻に担当してもらい、コロナの収束を願って一つひとつ心を込めて作った」と濵田さん。

 ネット販売したところ思いのほか反響があり、初回制作分は完売、現在は追加で制作中だという。旧姓の吉村で作家活動を続ける尚子さんも「今年は地元のイベントはもちろん、全国各地での出店、展示会のほとんどが中止になり、直接作品を見てもらえる場が激減。ヨゲンノトリが伊賀から全国各地へ羽ばたいていくのはうれしい」と話す。

 昨年購入した古民家を自らリフォームし、今年7月から工房兼住居として活用している2人。「広さも以前の2倍になり、作陶活動をするには良い環境になった。今後はオンラインショップでの販売や、注文品にも力を入れて頑張りたい。ヨゲンノトリの置物を飾ってもらって、少しでも和んでもらえれば」とニッコリ。

2020年8月29日付778号3面から

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